ジェノグラムとエコマップの違いとは?使い分けと併用のポイント

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「ジェノグラムとエコマップは何が違うの?」「どちらを先に作ればいい?」「一緒に使うことはできる?」そんな疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。ジェノグラムとエコマップは、どちらもアセスメントで使われる図ですが、可視化する対象がまったく異なります。この記事では、両者の違いを目的・記号・表現範囲の3つの軸で比較し、使い分けの基準や併用のポイントを具体例とともに解説します。

ジェノグラムとエコマップの基本をおさらい

まず、それぞれの定義を簡単に振り返ります。

ジェノグラムとは

ジェノグラム(Genogram)は、3世代以上の家族の構造・関係性・出来事を記号で表した図です。「家族図」とも呼ばれ、男性は□、女性は○、婚姻は実線、離婚は斜線2本など、標準化された記号体系を用います。家族間の感情的な関係(親密・葛藤・断絶など)も表現できます。

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エコマップとは

エコマップ(Ecomap)は、個人や家族を中心に、周囲の社会資源(人・機関・サービス)との関係性を図で表したものです。「生態図」とも呼ばれ、線の太さや種類で関係の強さや質を表現します。1975年にアン・ハートマンが考案しました。

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ジェノグラムとエコマップの違い【比較表】

両者の違いを7つの軸で整理します。

比較項目

ジェノグラム

エコマップ

可視化する対象

家族内部の関係

家族と外部環境の関係

中心に置くもの

中心人物(IP)の家族構造

個人または家族全体

表現する関係

血縁・婚姻・感情関係

社会資源とのつながり

世代の表現

3世代以上を縦に描く

世代構造は問わない

記号体系

標準化された記号(□○◇、婚姻線、離婚線など)

シンプルな線の太さ・種類・矢印

情報の性質

事実ベース(出生・婚姻・死亡など客観的情報)

状況ベース(関係の強さは主観的判断を含む)

変化の頻度

比較的安定(家族構成は頻繁に変わらない)

変化しやすい(支援状況により変わる)

違い1:「内側」と「外側」

最も根本的な違いは可視化する範囲です。

  • ジェノグラム = 家族の内側を見る図。「この家族はどういう構造で、メンバー間の関係はどうなっているか」を把握する

  • エコマップ = 家族の外側を見る図。「この家族は外部とどのようにつながっているか」を把握する

例えるなら、ジェノグラムは「家の間取り図」、エコマップは「家の周辺地図」のようなものです。間取りだけ見ても周辺環境はわからず、周辺地図だけ見ても家の中はわかりません。

違い2:記号の複雑さ

ジェノグラムの記号体系は複雑です。人物の性別・状態(死亡・妊娠・流産など)、パートナー関係(婚姻・離婚・別居・内縁)、親子関係(実子・養子・里子)、感情関係(親密・葛藤・断絶・虐待)など、多くの種類があります。

一方、エコマップの記号はシンプルです。基本的には「線の太さ」「線の種類(実線・破線・ギザギザ線)」「矢印の方向」の3つの要素で関係を表現します。社会資源は円で描き、中に名称を書くだけです。

違い3:情報の変化しやすさ

ジェノグラムに記載する情報は比較的安定しています。 出生・婚姻・死亡といった事実に基づく情報が中心であり、頻繁に大きく変わることは少ないです。

エコマップの情報は変化しやすいです。 新しいサービスの利用開始、担当者の変更、転居、友人関係の変化など、社会資源とのつながりは日々動きます。そのため、エコマップは定期的な更新が前提となります。

どちらを使えばいい?使い分けの基準

「どちらを使うべきか」は、何を把握したいかによって決まります。

ジェノグラムが適している場面

目的

具体例

家族構成を把握したい

初回面談で家族メンバーの全体像をつかみたい

家族内の関係パターンを分析したい

世代を超えて繰り返される関係のパターンを見たい

婚姻・離婚・再婚の複雑な構造を整理したい

ステップファミリーなど複雑な家族構成を可視化したい

家族歴を記録したい

疾患や出来事の家族内での分布を確認したい

エコマップが適している場面

目的

具体例

支援ネットワークを把握したい

どこからどんな支援を受けているかを一覧化したい

支援の空白を見つけたい

支援が届いていない領域がないかチェックしたい

支援の偏りを確認したい

特定の機関に依存しすぎていないか確認したい

支援の変化を記録したい

介入前後で社会資源とのつながりがどう変わったか追跡したい

判断に迷ったら

迷ったら両方作るのがベストです。 ジェノグラムで家族の内部を把握し、エコマップで外部環境を把握することで、支援の全体像が見えてきます。実際の現場では、両者を併用することが標準的な実践となっています。

ジェノグラムとエコマップを併用する方法

ジェノグラムとエコマップは、1枚の図にまとめて併用することができます。むしろ併用することで、それぞれ単独では見えない情報が浮かび上がります。

併用の基本レイアウト

併用する場合の基本的な描き方は以下のとおりです。

  1. 図の中央にジェノグラムを描く — 中心人物(IP)を含む3世代の家族図を配置

  2. ジェノグラムの周囲にエコマップの社会資源を配置 — 医療・福祉・教育・地域などの社会資源を円で描く

  3. 家族メンバーと社会資源を線で結ぶ — 各社会資源がどの家族メンバーと関わっているかを線で示す

  4. 線の太さ・種類で関係の質を表現 — 強い関係は太線、弱い関係は破線、葛藤はギザギザ線

ポイントは、社会資源との線を「家族全体」ではなく「個々の家族メンバー」に結ぶことです。たとえば「かかりつけ医」は祖母と太い線でつながっているが、父とはつながっていない、といった個別の関係が見えるようになります。

併用することで見えるもの

ジェノグラムとエコマップを別々に見ているだけでは気づきにくい情報が、併用することで浮かび上がります。

  • 特定の家族メンバーに支援が集中している — ジェノグラムで「母」の位置を確認し、エコマップで母に集中する線の多さに気づく

  • 家族の孤立 — ジェノグラムで小さな核家族を確認し、エコマップで外部との線が極端に少ないことに気づく

  • 支援の入り口の発見 — ジェノグラムで関係が良好な家族メンバーを確認し、その人とつながっている社会資源を入り口にする

併用時の注意点

  • 情報量の管理: 1枚の図に詰め込みすぎると見にくくなります。社会資源は重要なもの(5〜10個程度)に絞りましょう

  • 更新タイミングの違い: ジェノグラム部分は比較的安定していますが、エコマップ部分は状況に応じて更新が必要です

  • 凡例の添付: 線の種類や太さの意味を凡例として明記しましょう。特に複数の支援者で共有する場合は必須です

ジェノグラム・エコマップの作成ツール

ジェノグラムとエコマップを併用する場合、同じキャンバス上で両方を作成できるツールが理想的です。

xGrapherのジェノグラム・エコマップメーカーは、1つのキャンバス上でジェノグラムとエコマップの両方を作成できます。

xGrapherのジェノグラム・エコマップ作成画面

主な特徴:

  • 登録不要・無料で利用可能

  • ジェノグラムの人物記号(□○◇)とエコマップの社会資源(円・四角)を同じ画面に配置

  • 線の太さ・色・スタイル(実線/破線/点線)を自由にカスタマイズ

  • 矢印の方向設定(片方向・双方向・なし)に対応

  • テキストラベルで関係の説明を追加

  • PNG・JPEG・SVG形式で画像ダウンロード

ジェノグラムとエコマップを別々のツールで作成する必要がないため、併用レイアウトの作成が効率的です。

よくある質問(FAQ)

Q. ジェノグラムとエコマップ、どちらが難しい?

記号の種類が多いジェノグラムの方がやや難しいと言えます。ジェノグラムには性別・婚姻関係・親子関係・感情関係など多数の記号があり、正確に使い分ける必要があります。一方、エコマップは線の太さと種類だけで表現できるため、比較的シンプルです。ただし、どちらも基本を理解すれば難しくはありません。

Q. 両方を1枚にまとめると見にくくならない?

社会資源の数を絞れば、1枚でも十分に見やすい図が作れます。 目安として、ジェノグラムは3世代(5〜10人)、エコマップの社会資源は5〜10個程度に収めると、バランスの良い図になります。情報が多すぎる場合は、ジェノグラムとエコマップを別々の図にすることも検討しましょう。

Q. ソシオグラムとは何が違う?

ソシオグラム(Sociogram)は集団内の人間関係を図式化したものです。クラスの友人関係や職場のコミュニケーションパターンなど、同じ集団に属する人々の相互関係を可視化します。ジェノグラムが「家族」、エコマップが「家族と外部環境」を対象とするのに対し、ソシオグラムは「集団のメンバー同士」を対象とする点が異なります。

Q. ファミリーマップとの違いは?

ファミリーマップ(Family Map)はジェノグラムの一種で、家族メンバー間の感情的な距離や関係パターンに焦点を当てた図です。ジェノグラムが構造(誰が誰とどのような関係か)を重視するのに対し、ファミリーマップは感情的な近さ・遠さをより詳細に表現します。エコマップとは対象範囲が異なり、ファミリーマップはあくまで家族内部にフォーカスしています。

まとめ

ジェノグラムとエコマップの最大の違いは、可視化する対象です。

  • ジェノグラム = 家族の内側(血縁・婚姻・感情関係)を記号で表した図

  • エコマップ = 家族の外側(社会資源とのつながり)を線の太さ・種類で表した図

どちらも単独で有用ですが、併用することで支援の全体像が見えてきます。ジェノグラムで家族構造を把握し、エコマップで外部ネットワークを把握するのが、アセスメントの標準的な実践です。

xGrapherのジェノグラム・エコマップメーカーなら、1つのキャンバス上で両方を同時に作成できます。まずは中心人物の家族図から始めて、周囲に社会資源を追加してみてください。

xgrapher

コラム著者・編集者

xGrapher編集チーム

xGrapher編集チームは、オンラインチャート作成ツールの開発者、技術ライターからなる専任チームです。グラフやチャートに関する実務経験から得た知識を活かし、ユーザーにとって価値のある情報を提供することに努めています。

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