ジェノグラムのキーパーソンの書き方|IP(主訴者)の記号と意味

「ジェノグラムの二重枠はどういう意味?」「キーパーソンとIP(主訴者)は何が違うの?」ジェノグラムでは、図の中心となる人物や家族の中で重要な役割を持つ人物を特別な記号で示します。
この記事では、IP(主訴者)の二重枠記号の書き方、キーパーソンの表記方法、それぞれの違いと使い分けをわかりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
IP(主訴者)とキーパーソンの違い
ジェノグラムには「中心人物」を示す表記が2種類あります。まず、この2つの概念の違いを整理しましょう。
IP(Identified Patient / 主訴者)とは
IP(Identified Patient)は、ジェノグラムの作成対象となる中心人物です。日本語では「主訴者」「当事者」「対象者」「本人」などと呼ばれます。
家族療法では、家族から「この人に問題がある」と名指しされた人物
医療・福祉の現場では、支援やアセスメントの対象となる人物
保育の現場では、支援が必要な子ども
IPはジェノグラムの「起点」であり、「この人を中心にして家族関係を描く」という図の基準点です。
キーパーソンとは
キーパーソン(Key Person)は、対象者の生活において重要な意思決定や世話を担う人物です。
介護の現場では、利用者の代わりに意思決定やケア方針の相談を担う家族
医療の現場では、患者の治療方針について相談する家族の代表者
保育の現場では、子どもの養育の中心を担う保護者
キーパーソンはIPとは異なる人物であることが多いのがポイントです。たとえば、認知症の高齢者(IP)に対して、その長女がキーパーソンになるケースが典型的です。
比較表
項目 | IP(主訴者) | キーパーソン |
|---|---|---|
意味 | ジェノグラムの中心人物 | 重要な意思決定・世話を担う人物 |
記号 | 二重枠(二重正方形・二重円) | 星マーク・「KP」の文字 |
人数 | 1人 | 1人が基本(複数の場合もある) |
必須か | 必須(図の起点) | 任意(必要に応じて) |
同一人物か | — | IPと同一の場合もあるが、異なることが多い |
IP(主訴者)の書き方
二重枠の記号
IPは人物の記号を二重の枠線で描くことで示します。
性別 | 通常の記号 | IPの記号 |
|---|---|---|
男性 | □(正方形) | ◻◻(二重正方形) |
女性 | ○(円) | ◎(二重円) |
性別不明 | ◇(菱形) | ◇◇(二重菱形) |
二重枠にすることで、ジェノグラムのどの人物が図の中心(起点)であるかが一目でわかります。
IPの配置ルール
IPはジェノグラムの中央付近に配置するのが基本です。IPを起点に上の世代(親・祖父母)、下の世代(子ども)、横に配偶者やきょうだいを展開していきます。
IPの選び方
IPは「誰の視点でジェノグラムを描くか」によって決まります。
場面 | IPになる人物 |
|---|---|
家族療法 | 家族から「問題がある」と指摘された人 |
介護アセスメント | 介護サービスの利用者本人 |
保育 | 気になる行動や家庭環境のある子ども |
医療ソーシャルワーク | 入院・治療中の患者本人 |
遺伝カウンセリング | 遺伝疾患のリスクを評価する対象者 |
注意すべきは、IP=「問題のある人」という意味ではないことです。家族療法の文脈では「家族から名指しされた人」という意味であり、家族システム全体を理解するための起点にすぎません。
キーパーソンの書き方
星マーク方式
キーパーソンは、人物の記号の近くに★(星マーク)を付けて示す方法が一般的です。
上の例では、80歳の母がIP(介護の対象者)、55歳の長女がキーパーソン(介護方針の相談相手)です。
テキスト表記方式
星マークの代わりに、人物の記号の近くに「KP」「キーパーソン」と文字で書き添える方法もあります。
記号が標準化されていないため、星マーク方式・テキスト方式のいずれを使う場合も、ジェノグラムに凡例を添えることが大切です。
キーパーソンの選定基準
キーパーソンは、以下のような条件から総合的に判断します。
同居している家族: IPと同居し、日常的にケアに関わっている人物
意思決定を担う人物: 治療・介護方針について判断する立場にある人物
連絡窓口: 医療機関やケアマネジャーとの連絡を担当する人物
経済的支援者: 治療費や介護費を負担している人物
一般的には配偶者や同居の子どもがキーパーソンになることが多いですが、遠方の家族が意思決定を担っているケースや、きょうだいの中で特定の一人が中心的な役割を果たしているケースもあります。
キーパーソンが複数いる場合
場合によっては、キーパーソンが複数存在することもあります。たとえば、長男が経済的な支援を、長女が日常の介護を担当しているようなケースです。
このように複数のキーパーソンがいる場合は、それぞれの役割を注記しておくと、支援チーム内での情報共有がスムーズになります。
分野別の表記の違い
キーパーソンとIPの表記は、分野によって慣習が異なります。
介護・ケアマネジメント
介護の現場では、IPとキーパーソンの両方を明記することが一般的です。ケアプランの作成やサービス担当者会議で、「誰がサービスの対象者か」「誰に連絡すべきか」を明確にする必要があるためです。
IP: 利用者本人(二重枠)
キーパーソン: 意思決定を担う家族(星マークまたはKPテキスト)
医療(ソーシャルワーク・看護)
医療現場では、IP(患者本人)を二重枠で示すことが基本です。キーパーソンの表記は、入退院支援やカンファレンスの際に必要に応じて追加します。
保育・児童福祉
保育の現場では、IPは気になる子どもが該当します。キーパーソンという用語よりも、「主たる養育者」という表現が使われることが多く、同居の囲み線と組み合わせて養育環境を示すのが一般的です。
家族療法・心理臨床
家族療法では、IPは「家族から問題があるとされた人」を指す専門用語としての意味合いが強くなります。キーパーソンの概念は使わず、代わりに感情関係線(親密・葛藤・断絶など)を用いて家族全体のダイナミクスを描きます。
分野 | IPの呼び方 | キーパーソン | 特徴 |
|---|---|---|---|
介護 | 利用者・本人 | 必ず記載 | IP+KPの両方を明記 |
医療 | 患者 | 必要に応じて | 入退院支援で重要 |
保育 | 対象児 | 主たる養育者 | 同居の囲み線と併用 |
家族療法 | IP(Identified Patient) | 使わない | 感情関係線を重視 |
IPとキーパーソンの配置例
例1:介護アセスメント
85歳の女性(要介護3)が対象。長男(60歳)と同居しており、長男がキーパーソン。次女(55歳)は遠方在住。
例2:保育(気になる子ども)
5歳の男児がIP。母親が主たる養育者。父母は離婚しており、母方祖母が育児を手伝っている。
例3:家族療法
不登校の中学生(14歳男子)がIP。両親と妹の4人家族。父母間に葛藤あり。
この例では、IPの長男だけでなく、父母間の葛藤パターンが図に表現されています。家族療法では、IPの「問題」を個人の問題としてではなく、家族システム全体の文脈で理解するためにジェノグラムを活用します。
よくある間違いと注意点
間違い1:IPとキーパーソンを混同する
IPは「図の中心人物」、キーパーソンは「意思決定や世話を担う重要人物」です。介護の場面では、利用者(IP)とキーパーソン(家族)は別の人物であることがほとんどです。
間違い2:IPを決めずにジェノグラムを書き始める
IPを決めないまま書き始めると、どの範囲の家族を含めるかが定まらず、情報が不足したり過剰になったりします。最初にIPを決め、そこから3世代を展開する手順を守りましょう。
間違い3:キーパーソンの表記を省略する
キーパーソンの情報は、多職種連携やケアプラン作成の際に「誰に連絡すべきか」を即座に把握するために重要です。特に介護・医療の現場では省略せずに記載しましょう。
間違い4:二重枠の意味を知らずにジェノグラムを読む
他の人が作成したジェノグラムを読む際、二重枠の意味を知らないと図の起点がわかりません。二重枠=IP(主訴者・中心人物)であることは、ジェノグラムの基本知識として押さえておきましょう。
xGrapherでIPとキーパーソンを表示する
xGrapherのジェノグラム・エコマップメーカーでは、人物を配置した後の設定パネルから「IP(主訴者)」のチェックを入れるだけで二重枠が自動的に適用されます。キーパーソンの星マークやテキスト注記も簡単に追加できます。

複雑な家族構成であっても、ドラッグ&ドロップで人物の配置を調整しながら、IPやキーパーソンの表記を自由に切り替えられるため、アセスメントの精度が上がります。
よくある質問(FAQ)
Q1. ジェノグラムの二重枠(二重線)は何を意味しますか?
二重枠はIP(Identified Patient / 主訴者)を示す記号です。ジェノグラムの中心となる人物、つまり「この人を起点に家族関係を描いている」ことを表します。男性は二重正方形(◻◻)、女性は二重円(◎)で描きます。
Q2. キーパーソンとIPは同じ人物ですか?
同じ場合もありますが、異なることが多いです。IPはジェノグラムの中心人物(例:要介護の高齢者)、キーパーソンは意思決定やケアを担う人物(例:その長男)です。介護の場面では両者が別の人物であるのが一般的です。
Q3. キーパーソンが決まっていない場合はどう書きますか?
キーパーソンが明確でない場合は、無理に記載する必要はありません。ただし、介護アセスメントなどでキーパーソンの特定が求められる場合は、同居状況・連絡頻度・経済的支援の有無などを手がかりに判断します。
Q4. キーパーソンは1人だけですか?
複数いる場合もあります。たとえば、経済支援を担う長男と日常介護を担う長女がいるケースでは、両方をキーパーソンとして記載し、それぞれの役割を注記するとわかりやすくなります。
Q5. 家族療法でもキーパーソンという概念を使いますか?
家族療法ではキーパーソンという用語は通常使いません。代わりに、IP(家族から「問題がある」と名指しされた人)を中心に、感情関係線(親密・葛藤・断絶など)を用いて家族システム全体のダイナミクスを表現します。
まとめ
ジェノグラムにおけるキーパーソンとIP(主訴者)の書き方のポイントは以下のとおりです。
IP(主訴者)は二重枠で描く(男性=二重正方形、女性=二重円)
キーパーソンは星マーク(★)またはKPテキストで示す
IPは「図の中心人物」、キーパーソンは「意思決定や世話を担う重要人物」で別の概念
IPはジェノグラムの中央付近に配置する
分野(介護・医療・保育・家族療法)によって表記の慣習が異なるため、凡例を添えることが大切
キーパーソンが複数いる場合は、役割を注記して区別する
ジェノグラムの基本的な記号と書き方はジェノグラムとは?書き方・記号の意味をわかりやすく解説で解説しています。
実際にジェノグラムを作成するには、xGrapherのジェノグラム・エコマップメーカーをお試しください。IPの二重枠もキーパーソンの表記もワンクリックで設定できます。

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