PDPC法(過程決定計画図)とは?作り方の5ステップと2つの型、フローチャートとの違いを徹底解説

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「計画どおりに進まなかったらどうするか?」——プロジェクトや業務改善を進める上で、この問いに事前に答えを用意しておけるかどうかが、成功と失敗の分かれ道になります。

あらゆる計画にはリスクがつきものです。しかし、起こりうるトラブルを事前に洗い出し、それぞれの対策を図にしておけば、不測の事態にも慌てずに対応できます。そこで力を発揮するのがPDPC法です。

この記事では、PDPC法の基本概念から2つの型(逐次展開型・強制連結型)の違い、作り方の5ステップ、フローチャートやFMEAとの違い、さらには無料オンラインツールでの作成方法まで、初めての方にも分かりやすく解説します。

PDPC法とは?

PDPC法(Process Decision Program Chart:過程決定計画図)とは、目標達成までのプロセスにおいて起こりうる問題や障害を事前に予測し、それぞれに対する対策・代替ルートを図式化する手法です。新QC7つ道具の一つに数えられ、プロジェクトのリスクマネジメントに広く活用されています。

[PDPC図の例]

1968年に近藤次郎博士が東京大学での宇宙開発計画で提唱したのが始まりとされています。もともと「予測できない事態」に対してあらかじめ複数のシナリオを準備するための手法として考案され、その後、品質管理やプロジェクト管理の分野に広まりました。

PDPC法の最大の特徴は、正常ルートだけでなく異常時の代替ルートも同時に可視化する点です。通常のフローチャートが「こうなるはず」という一本道を描くのに対し、PDPC法は「もし○○が起きたら△△で対処する」というWhat-If思考を図に落とし込みます。

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PDPC法の2つの型

PDPC法には、目的や状況に応じて使い分ける2つの型があります。

逐次展開型

逐次展開型は、計画の進行に合わせて順番にステップを追いながら、各ステップで起こりうる問題と対策を展開していく方法です。

特徴:

  • 開始から目標達成まで、時系列に沿って上から下(または左から右)へ進む

  • 各ステップに「このステップで何が起こりうるか」を問いかけ、異常時の分岐を追加する

  • 正常ルートと異常ルートが明確に区別される

  • 計画段階で使うことが多い(実行前にリスクを洗い出す)

向いている場面: プロジェクト計画、新製品の立ち上げ、業務プロセスの設計など、手順がある程度決まっている場合

強制連結型

強制連結型は、最初に理想の目標状態現在の状態を設定し、その間をつなぐ複数のルートを強制的に考え出す方法です。

特徴:

  • 「現状」と「目標」を両端に置き、間を複数のシナリオで埋める

  • 一つのルートが行き詰まったら別のルートを探るという発想

  • 途中のステップが互いに影響し合い、ルート間の乗り換えもある

  • 不確実性が高い状況で使うことが多い(正解が見えない段階でアイデアを出す)

向いている場面: 研究開発、新規事業の立案、未経験の課題解決など、正解がまだ分からない場合

使い分けの目安

比較項目

逐次展開型

強制連結型

発想の方向

順方向(手順を追って展開)

双方向(目標と現状から挟み込む)

不確実性

比較的低い(手順はある程度分かる)

高い(手順自体が不明確)

主な用途

リスク対策の洗い出し

複数シナリオの創出

図の形

ツリー状(分岐が多い)

ネットワーク状(ルートが交錯する)

実務では逐次展開型が使われるケースが多く、この記事でも逐次展開型を中心に解説します。

フローチャートとの違い

PDPC法を初めて学ぶ方がまず疑問に感じるのが、「フローチャートと何が違うのか?」という点です。見た目が似ていますが、目的と表現する内容が異なります。

比較項目

PDPC法(過程決定計画図)

フローチャート

目的

リスクを予測し、代替ルートを計画する

確定した処理の流れを記述する

分岐の意味

「もし問題が起きたら」という不確実な事象

「条件に応じた処理の振り分け」という確定的な分岐

代替ルート

複数の対策ルートを並列で描く

基本的に1つのルートに収束する

時間軸

未来の不確実な事象を扱う

現在の確定したプロセスを扱う

使うタイミング

計画段階(実行前のリスク分析)

設計・運用段階(プロセスの文書化)

ポイント: フローチャートは「こうする」という確定的な手順を表現し、PDPC法は「こうなるかもしれないから、こう備える」という不確実性への対策を表現します。

PDPC法の作り方——5つのステップ

STEP 1:テーマと目標を設定する

まず、PDPC法で分析するテーマ(対象プロセス)と達成したい目標を明確にします。

設定のコツ:

  • テーマは具体的に(「新システムの導入プロジェクト」「展示会の企画・運営」など)

  • 目標は「いつまでに」「何を」「どの状態にする」まで定義する

  • 範囲が広すぎる場合はフェーズごとに分割する

例:テーマ「社内基幹システムのクラウド移行」、目標「6ヶ月以内にダウンタイムゼロで本番切り替えを完了する」

STEP 2:正常ルートのステップを洗い出す

目標達成までの理想的な手順(正常ルート)を時系列で洗い出し、上から下へ並べます。

この段階では「すべてが計画どおりに進んだ場合」を想定して、主要なステップを5〜10個程度に整理します。系統図法やWBSで事前にタスクを分解してあれば、そこから主要ステップを抽出すると漏れが少なくなります。

例(クラウド移行プロジェクト):

  1. 現行システムの調査・棚卸し

  2. 移行先クラウド環境の選定

  3. 移行計画の策定

  4. テスト環境でのデータ移行検証

  5. 本番環境の構築

  6. データ移行の実行

  7. 動作確認・受入テスト

  8. 本番切り替え・稼働開始

STEP 3:各ステップのリスクを洗い出す

正常ルートの各ステップについて、「ここで何がうまくいかない可能性があるか?」を洗い出します。

洗い出しのコツ:

  • 過去のトラブル事例や経験者へのヒアリングを活用する

  • 「人」「モノ」「方法」「環境」の4つの観点から考える

  • 発生確率が低くても影響が大きいリスクは必ず含める

  • チームでブレインストーミングを行い、多角的に検討する

例えば「テスト環境でのデータ移行検証」のステップでは、「データ量が想定より多く、移行に予定以上の時間がかかる」「文字コードの不一致でデータが文字化けする」「移行ツールがバージョン非対応」などのリスクが考えられます。

STEP 4:対策・代替ルートを追加する

洗い出したリスクそれぞれに対して、対策や代替ルートを追加します。

対策を考える際の3つの視点:

視点

説明

予防策

リスクの発生そのものを防ぐ

事前にデータ量を計測し、移行スケジュールに余裕を持たせる

発見策

リスクが発生したことを早期に検知する

移行後のデータ件数を自動チェックするスクリプトを準備する

対応策

リスクが発生した後の回復手段

ロールバック手順を事前に整備し、旧システムに即座に戻せるようにする

対策を図に書き込む際は、正常ルートの横に分岐として配置します。対策の結果、正常ルートに復帰するのか、別の代替ルートに進むのかも明記しましょう。

STEP 5:図を整理し、対策の優先順位を決める

すべてのリスクと対策を書き出したら、図全体を見渡して整理します。

整理のポイント:

  • 対策が多すぎて煩雑な場合は、影響度と発生確率で優先順位をつける

  • 特に重要な対策には色分けやマーカーで目立たせる

  • 最終的に「この対策でも対応できなかった場合」の最終手段(エスカレーション先など)も記載する

  • 関係者全員でレビューし、抜け漏れがないか確認する

完成したPDPC図は、プロジェクトのリスク管理台帳としても機能します。定期的に見直し、新たなリスクが見つかれば追記して更新していきましょう。

【具体例】ITシステム導入プロジェクトでPDPC法を使う

ここでは、中小企業が新しい在庫管理システムを導入するプロジェクトを例に、PDPC法の具体的な使い方を見てみましょう。

正常ルート

  1. 要件定義の完了 → 2. ベンダー選定 → 3. テスト環境構築 → 4. ユーザー受入テスト → 5. 本番稼働

リスクと対策の洗い出し

ステップ

想定リスク

対策

要件定義

現場の要望が多すぎてスコープが膨張する

「Must / Should / Could」で優先度を分類し、Mustのみ初期スコープとする

ベンダー選定

見積もりが予算を大幅に超過する

3社以上から相見積もりを取得。超過分は機能を段階的にリリースする計画に変更

テスト環境構築

既存システムとのデータ連携でエラーが発生する

連携テストを早期に実施。エラー発生時はCSV手動連携をバックアップ手段とする

ユーザー受入テスト

操作が複雑で現場から反発がある

テスト前に操作マニュアルと研修を実施。UI改善要望は優先度をつけて対応

本番稼働

稼働直後にシステム障害が発生する

旧システムを2週間並行稼働させ、切り戻し可能な状態を維持する

このように表に整理したものを図式化すると、正常ルートの各ステップから横方向にリスクと対策の分岐が伸びる形になり、チーム全員で「何が起きたらどう対処するか」を共有できます。

PDPC法とFMEA・デシジョンツリーの比較

リスク分析の手法はPDPC法だけではありません。代表的な手法との違いを整理しておきましょう。

比較項目

PDPC法

FMEA(故障モード影響解析)

デシジョンツリー

目的

プロセスのリスク対策を計画する

製品・工程の故障モードを分析する

意思決定の選択肢と結果を分析する

対象

プロジェクト・業務プロセス

製品設計・製造工程

経営判断・投資判断

表現形式

フロー図(分岐付き)

表(RPN:リスク優先度数で評価)

ツリー図(確率と期待値を計算)

強み

代替ルートを可視化、直感的に理解しやすい

網羅的・定量的なリスク評価

確率に基づく合理的な判断

難点

定量評価が苦手

図的な分かりやすさに欠ける

プロセス全体の俯瞰には不向き

PDPC法の強みは「図で全体を俯瞰できる」点です。関係者間のコミュニケーションツールとしても優れており、専門知識がなくても一目でリスクと対策の全体像を把握できます。

PDPC法のメリットとデメリット

メリット

メリット

説明

リスクを事前に可視化できる

「もしも」のシナリオを図にすることで、潜在的なリスクを漏れなく洗い出せる

チーム内で共有しやすい

図による表現のため、関係者全員がリスクと対策を直感的に理解できる

トラブル発生時の対応が速い

事前に対策が決まっているため、想定内のトラブルには迅速に対応できる

計画の質が向上する

リスクを考慮した計画を立てることで、手戻りや遅延のリスクが減少する

教訓の蓄積に使える

プロジェクト完了後にPDPC図を振り返ることで、次回のリスク予測精度が向上する

デメリット

デメリット

対策

リスクの洗い出しに経験が必要

チームでブレインストーミングを行い、複数人の知見を集める

対策が多すぎると図が煩雑になる

影響度×発生確率で優先度をつけ、重要なリスクに絞る

定量的なリスク評価が難しい

FMEAやリスクマトリクスなど定量手法と併用する

想定外のリスクには対応できない

定期的に図を見直し、新たなリスクを追記して更新する

オンラインでPDPC図を作成するなら「xGrapher」

PDPC図を手書きやPowerPointで作成すると、ステップの追加やリスク分岐の修正に手間がかかり、変更のたびにレイアウトを調整する必要があります。

xGrapherは、無料・登録不要でPDPC図を作成できるオンラインツールです。フローチャートの編集機能をベースに、PDPC図に最適化されたテンプレートと豊富なノードタイプを提供しています。

xGrapherのPDPC図作成ツールの画面

xGrapherのPDPC図ツールならではの機能

  • 24種類以上のノードタイプに対応 — 開始・終了、アクション、条件分岐(ひし形)、書類・帳票、データベースなど、プロセスの各要素を適切な図形で表現できる

  • PDPC専用テンプレートを搭載 — 品質検査プロセスのテンプレートがあらかじめ用意されており、すぐにPDPC図の作成を始められる

  • ノードの色分け・スタイル変更 — 正常ルートと異常ルートを色で区別したり、重要な対策ノードを目立たせたりできる

  • エッジラベルで分岐条件を明記 — 矢印に「はい/いいえ」「異常時」などのラベルを付けて、分岐の条件を明確に表現

  • 元に戻す・やり直し — 操作履歴を保持しているので、試行錯誤しながらリスクと対策を追加・修正できる

  • コピー&ペースト対応 — 類似のリスク分岐パターンをコピーして効率よく作成できる

  • 画像ダウンロード — PNG・JPEG・SVG形式で書き出し。リスク管理資料やプロジェクト計画書にそのまま貼り付けられる

基本的な使い方

  1. xGrapherのPDPC図作成ページにアクセス

  2. テンプレートが表示されるので、テーマに合わせてノードのテキストを編集

  3. ノードの接続ポイントをドラッグし、別のノードにドロップして矢印を追加

  4. 条件分岐(ひし形)ノードでリスクの判断ポイントを作成

  5. 異常時の対策ノードを追加し、色を変えて正常ルートと区別

  6. エッジにラベルを付けて分岐条件を記入

  7. 完成したら画像としてダウンロード

特にノードの色分け機能を活用すれば、正常ルート(緑系)、リスク発生時の対策(赤系・黄系)、最終手段(灰色系)といった視覚的な分類が一目で分かるPDPC図を作成できます。

よくある質問

Q1. PDPC法はどんな場面で使いますか?

プロジェクトの計画段階で、起こりうるリスクと対策を事前に洗い出したいときに使います。製品開発、システム導入、イベント運営、業務改善など、「計画どおりに進まない可能性がある」あらゆるプロジェクトに活用できます。品質管理の分野ではアローダイアグラム法でスケジュールを立てた後、リスク対策としてPDPC法を組み合わせるケースが多いです。

Q2. PDPC法の名前の由来は何ですか?

PDPCは「Process Decision Program Chart」の頭文字で、日本語では「過程決定計画図」と訳されます。プロセス(過程)における意思決定(Decision)のプログラム(計画)を図(Chart)にするという意味です。1968年に近藤次郎博士によって提唱されました。

Q3. 逐次展開型と強制連結型のどちらを使えばよいですか?

プロジェクト計画や業務プロセスの改善など、手順がある程度見えている場合は逐次展開型が適しています。一方、研究開発や新規事業のようにゴールへの道筋が不明確な場合は強制連結型が有効です。実務では逐次展開型が圧倒的に多く使われています。

Q4. PDPC法でリスクをうまく洗い出すコツはありますか?

一人で考えるのではなく、チームでブレインストーミングを行うのが最も効果的です。また、過去のプロジェクトのトラブル事例を参照したり、「人・モノ・方法・環境」の4つの視点から網羅的に検討したりするとリスクの漏れが少なくなります。親和図法で意見を整理し、連関図法で原因の因果関係を分析してからPDPC法に取り組むと、より精度の高いリスク洗い出しができます。

Q5. PDPC法は新QC7つ道具の中でどの位置づけですか?

親和図法で問題を整理し、連関図法で根本原因を特定し、系統図法で対策を展開し、マトリックス図法で優先順位を決め、アローダイアグラム法でスケジュールを立てた後、実行段階でのリスクに備えるのがPDPC法の役割です。問題解決プロセスの「実行フェーズにおけるリスク管理」を担う道具です。

まとめ

PDPC法(過程決定計画図)は、プロジェクトの各ステップで起こりうるリスクを事前に予測し、対策や代替ルートを図式化することで、不測の事態に備える手法です。

この記事のポイントを振り返ります。

  • PDPC法は新QC7つ道具の一つで、リスク対策を可視化するための手法

  • 逐次展開型(手順に沿ってリスクを展開)と強制連結型(目標と現状から複数ルートを創出)の2つの型がある

  • フローチャートとの違いは、不確実な事象への対策を描くかどうか

  • 作り方は、テーマ設定 → 正常ルート作成 → リスク洗い出し → 対策追加 → 整理・優先順位づけの5ステップ

  • xGrapherなら24種類以上のノードタイプとPDPC専用テンプレートで、無料・登録不要でPDPC図を作成できる

プロジェクトの計画段階でぜひPDPC法を活用してみてください。「想定外を想定内にする」ことで、チーム全体の安心感と対応力が格段に高まるはずです。

xgrapher

コラム著者・編集者

xGrapher編集チーム

xGrapher編集チームは、オンラインチャート作成ツールの開発者、技術ライターからなる専任チームです。グラフやチャートに関する実務経験から得た知識を活かし、ユーザーにとって価値のある情報を提供することに努めています。

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