Excel(エクセル)でのパレート図の作り方を完全ガイド!

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「売上の8割は、全顧客の2割が生み出している」「製品のクレームの7割は、特定の3つの原因に集中している」
こんな話を聞いたことはありませんか?ビジネスにおける重要な問題は、実はごく少数の原因から引き起こされていることが少なくありません。

この「重要ないくつか」を特定し、改善の優先順位を判断するのに絶大な効果を発揮するのがパレート図です。

この記事では、多くのビジネスパーソンにとって身近なツールであるExcelを使ってパレート図を作成する方法を、データの準備からグラフの完成まで、初心者の方にも分かりやすくステップバイステップで解説します。
この記事を読めば、あなたもすぐにパレート図を使いこなし、データに基づいた的確な意思決定ができるようになります。

そもそもパレート図とは?80:20の法則をグラフで表現

作り方の前に、まずはパレート図がどのようなもので、なぜビジネスで重宝されるのかを簡単におさらいしましょう。

パレート図は、項目別のデータを降順(大きい順)に並べた棒グラフと、その累計構成比を示す折れ線グラフを組み合わせた複合グラフです。

パレート図の例

このグラフの目的は、「全体に最も影響を与えている項目は何か」を視覚的に明らかにすることです。経済学者のヴィルフレド・パレートが発見した「所得の8割は、2割の富裕層が所有している」という経験則から、パレートの法則または「80:20の法則」とも呼ばれています。

ビジネスにおいては、以下のような様々なシーンで活用されています。

  • 品質管理(QC): 不良品の原因を特定し、どの原因から対策すべきか判断する。
    参考記事: QC7つ道具・新QC7つ道具とは?

  • 売上分析: どの商品が売上の大部分を占めているか(売れ筋商品)を把握する。

  • 在庫管理: 売上貢献度の高い商品から優先的に在庫を確保する。

  • 顧客分析: 全体の売上の大部分を占める優良顧客層を特定する。

  • 業務改善: 最も時間がかかっている業務を特定し、効率化を図る。

このように、パレート図は限られたリソース(時間、人、お金)をどこに集中させるべきかを見極めるための、強力な分析ツールなのです。

【Excel 2016以降】標準機能でパレート図を作成する方法

Excel 2016、2019、2021、およびMicrosoft 365のExcelをご利用の場合、パレート図は標準のグラフ機能として搭載されています。あとからご紹介する手動での作成方法よりもはるかに少ない手順で、あっという間にパレート図を完成させることができます。 手動計算が不要なため、データの準備も非常にシンプルです。

STEP1: 元データを準備する

手動作成との大きな違いは、データの並べ替えや構成比の計算が不要な点です。 分析したい項目と数値が入力された、以下のようなシンプルな表を準備するだけでOKです。

商品名と売上高のシンプルな表

STEP2: データを選択し、グラフを挿入する

  1. グラフにしたいデータ範囲(見出しを含む)を選択します。

  2. 「挿入」タブをクリックします。

  3. 「グラフ」グループの中にある「統計グラフの挿入」(滝グラフのようなアイコン)をクリックします。

  4. 「ヒストグラム」の項目に表示される「パレート図」を選択します。

    パレート図の挿入位置

STEP3: グラフの完成

これだけの操作で、Excelが自動的にデータを降順に並べ替え、累計構成比を計算し、パレート図を作成してくれます。

自動計算されたパレート図

あとは必要に応じてグラフのタイトルを編集したり、デザインを調整したりするだけです。 手動での作成方法と比べて、驚くほど簡単であることがお分かりいただけたかと思います。

急いで資料を作成したい場合や、まずは手軽にデータの傾向を掴みたいという場合には、この標準機能を使うのが最も効率的です。 一方で、グラフの細かい仕組みを理解したり、特殊なカスタマイズを加えたりしたい場合には、次にご紹介する手動での作成方法が役立ちます。

【5ステップで完成】Excel(エクセル)でのパレート図の作り方(全バージョン対応)

ここでは、どんなバージョンのExcelでも応用が利く、基本的な手動での作成方法を5つのステップで解説します。

今回は、以下のような「商品別の売上データ」を例に進めます。

商品名と売上高のシンプルな表

STEP1: データを準備して降順に並べ替える

まずは、パレート図の元となるデータを用意します。
重要なポイントは、分析したい項目(今回は売上高)を降順(大きい順)に並べ替えることです。

  1. データ範囲全体を選択します。

  2. 「データ」タブの「並べ替え」をクリックします。

  3. 「最優先されるキー」で「売上高」を選択し、「順序」を「大きい順」にしてOKをクリックします。

データを選択して売上で降順に並べ替える

STEP2: 構成比と累計構成比を計算する

次に、棒グラフと折れ線グラフの元になる「構成比」と「累計構成比」を計算するための列を追加します。

STEP2-1 構成比の計算

各商品の売上高が、全体の売上合計に対してどれくらいの割合を占めるかを計算します。

=(個別の売上高)/(売上高の合計) という数式を入力します。合計値を参照する部分は、数式をコピーしてもずれないように$で固定(絶対参照)するのがコツです(例: ここでの例C2はに入れる関数は=B2/SUM($B$2:$B$9)。

構成比を計算する

累計構成比の計算

上から順に構成比を足し合わせていきます。これが折れ線グラフのデータになります。

  • 一番上の項目は、構成比と同じ値です。=SUM(C2:C2)

  • 二番目以降は、=(一つ上の累計構成比)+(その項目の構成比) で計算します。例: =SUM(C2:C3)

累積構成比の計算

STEP3: 棒グラフと折れ線グラフの「複合グラフ」を作成する

データが準備できたら、いよいよグラフを作成します。

  1. グラフの元になるデータ範囲(今回は商品名、売上高、累計構成比の3列)を選択します。(Ctrlを押しながらドラッグすると離れている範囲を一括で指定できます)

  2. 「挿入」タブから「複合グラフ」「集合縦棒-第2軸の折れ線」を選びます。

「集合縦棒-第2軸の折れ線」を選択

※誤ったデータが指定された場合にはグラフを右クリック>「データの選択」から正しい列を指定してください

「集合縦棒-第2軸の折れ線」がない場合

「集合縦棒-折れ線」を選択します。このままでは、売上高(数値)と累計構成比(%)の単位が大きく異なるため、折れ線グラフが下の方に張り付いてしまいます。
そこで、折れ線グラフを「第2軸(右軸)」に表示されるように設定します。

  1. STEP3の複合グラフ作成画面で、「累計構成比」の系列の**「第2軸」のチェックボックスにチェックを入れます。**

  2. (もしグラフ作成後に設定する場合)グラフ上の折れ線グラフを右クリックし、「データ系列の書式設定」を選択。「系列のオプション」で「第2軸」を選びます。

第2軸にチェックを入れる

これで、パレート図の基本的な形が完成しました!

STEP5: グラフの見た目を整える

最後に、誰が見ても分かりやすいグラフになるように、タイトルや軸ラベルなどを整えましょう。

  • グラフタイトル: 「商品別売上分析」など、内容がわかるタイトルをつけます。

  • 軸の書式設定:

    • 第2軸(右軸)の最大値を「1.0」(100%)に設定すると、グラフが見やすくなります。軸を右クリック→「軸の書式設定」→「最大値」を1.0に。

    • 主軸(左軸)と第2軸の目盛線がずれている場合は、適宜調整します。

  • 棒グラフの間隔: 棒グラフを右クリック→「データ系列の書式設定」→「系列のオプション」で「要素の間隔」を「0%」にすると、棒同士がくっつき、よりパレート図らしくなります。

    データ系列の書式設定

お疲れ様でした!以上でExcelでのパレート図作成は完了です。

[完成したパレート図]

完成したパレート図

もっと手軽に美しいパレート図を作りたいなら

Excelでの作成方法は非常に便利ですが、「データの並べ替えや累計比率の計算が少し面倒…」「毎回設定を調整するのが大変…」と感じた方もいるかもしれません。

そんな方には、もっと手軽に、そして見た目も美しいパレート図を作成できるオンラインツールがおすすめです。

例えば、当サイトが運営するグラフ作成ツール xGrapher なら、データをコピー&ペーストするだけで、面倒な計算や設定は一切不要。自動で美しいパレート図が完成します。

xGrapherのパレート図作成画面

xGrapherの特徴:

  • 操作が直感的: Excelのような複雑な操作は不要です。

  • デザイン性が高い: デフォルトで洗練されたデザインのグラフが作成できます。

  • 共有が簡単: 作成したグラフはURLで簡単に共有したり、画像としてダウンロードしたりできます。

Excelでの作成に慣れている方も、一度試してみてはいかがでしょうか?資料作成の時間が大幅に短縮できるかもしれません。

➡️ 今すぐ無料でパレート図を作成してみる: xGrapher パレート図作成ツール

また、パレート図の理論や、より深い分析方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
➡️ 関連記事: パレート図とは?見方や作り方、活用事例をわかりやすく解説

【応用編】パレート図から一歩進んだ「ABC分析」とは?

パレート図が作成できるようになったら、次はその分析結果を活用してみましょう。
パレート図と非常によく似た分析手法に「ABC分析」があります。

ABC分析は、パレート図で可視化された各項目を、重要度に応じてA・B・Cの3つのランクに分けて管理・分析する手法です。これにより、「特に重要なAランクの項目に集中する」といった、より具体的なアクションプランを立てやすくなります。

一般的には、累計構成比を基準に以下のようにランク分けします。

  • Aランク: 累計構成比が 0%〜80% の項目群(全体に最も大きな影響を与える、最重要グループ)

  • Bランク: 累計構成比が 80%〜90% の項目群(重要度が中程度のグループ)

  • Cランク: 累計構成比が 90%〜100% の項目群(影響度が低いグループ)

ABC分析に用いるパレート図

例えば、売上分析であれば、

  • Aランク商品: 看板商品。在庫切れを起こさないよう重点的に管理し、販促も強化する。

  • Bランク商品: 安定した売上がある商品。現状維持、またはテコ入れを検討する。

  • Cランク商品: 売上への貢献度が低い商品。取り扱いの見直し(縮小や中止)を検討する。

このように、パレート図で現状を把握し、ABC分析で具体的なアクションにつなげることで、データに基づいた戦略的な意思決定が可能になります。

Excel(エクセル)でのパレート図作成に関するQ&A

Q1. Excelでパレート図の棒グラフと折れ線グラフがうまく重なりません。
A1. 棒グラフと折れ線グラフの元になっているデータの単位が大きく違うため、そのままではうまく表示されません。折れ線グラフ(累計構成比)を選択し、「第2軸」に設定してください。これにより、グラフの右側に折れ線グラフ用の新しい軸が追加され、2つのグラフが適切に表示されるようになります。

Q2. データの項目が多いのですが、すべて表示すべきですか?
A2. あまりに項目が多い場合は、下位の項目を「その他」として一つにまとめるのがおすすめです。一般的に、パレート図で重要なのは上位80%を占める主要な項目です。下位の細かい項目をすべて表示すると、かえってグラフが見づらくなることがあります。

Q3. パレート図の棒グラフの順番がバラバラになってしまいます。
A3. パレート図を作成する前のデータ準備が重要です。グラフの元になるデータを、必ず降順(大きい順)に並べ替えてからグラフを作成してください。これを忘れると、パレート図として正しく機能しません。

Q4. Mac版のExcelでも同じように作れますか?
A4. はい、作成できます。基本的な操作手順(データの並べ替え、累計比率の計算、複合グラフの作成、第2軸の設定)はWindows版とほぼ同じです。メニューの配置などが若干異なる場合がありますが、同様の機能を使って作成可能です。

Q5. パレート図と普通の棒グラフはどう使い分ければ良いですか?
A5. 普通の棒グラフは、各項目の量を単純に比較するのに適しています(例:各支店の売上高比較)。一方、パレート図は、全体に対する影響度や貢献度を明らかにし、優先順位を付けるために使います。「どの問題から手をつけるべきか」「どの商品に注力すべきか」を判断したい場合に非常に有効です。

まとめ

今回は、Excel(エクセル)を使ったパレート図の作り方を、データの準備からグラフの仕上げまで詳しく解説しました。

パレート図は、単にデータを見栄え良く表現するだけでなく、「何が重要で、どこに集中すべきか」というビジネスの本質的な問いに答えるための強力なツールです。

最初は少し手順が多く感じるかもしれませんが、一度覚えてしまえば様々な分析に応用できます。
ぜひこの記事を参考に、あなたのビジネスにおける課題発見と改善にパレート図を活用してみてください。

また、よりスピーディーに分析を行いたい場合は、xGrapherのようなオンラインツールの活用も検討してみることをお勧めします。

xGrapher紹介画像

➡️ 関連記事: パレート図とは?見方や作り方、活用事例をわかりやすく解説

コラム著者・編集者

xGrapher編集チーム

xGrapher編集チームは、オンラインチャート作成ツールの開発者、技術ライターからなる専任チームです。グラフやチャートに関する実務経験から得た知識を活かし、ユーザーにとって価値のある情報を提供することに努めています。

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