【フローチャート記号解説4】「端子(開始・終了)」の正しい使い方と書き方ルール

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「フローチャートを描くとき、最初と最後はどういう図形にするのが正解?」
「四角い『処理』記号で始めてもいいの?」

フローチャートの基本中の基本である「端子(たんし)」。
一般的には「開始」と「終了」を表す記号ですが、実は誤った使い方がされやすい記号でもあります。

今回は記号解説シリーズ第4弾として、この「端子」記号を深掘りします。
「とりあえず丸い図形を置いておけばいい」と思っていると、読み手を混乱させる原因になります。特に現場でやりがちな「中断・再開の誤用」についても解説しますので、正しいルールをマスターして、誰にとっても読みやすい図解作成を目指しましょう。

フローチャートの「端子」記号とは?

まずは「端子」記号の形と、本来の役割について確認しましょう。

端子の形(形状)

端子記号は、一般的に「角の丸い長方形」または「カプセル型(スタジアム型)」で描かれます。
JIS規格(日本産業規格)などの標準的なルールでは、四角形の左右が丸くなったこの形状が推奨されています。

フローチャートの端子記号

通常の「処理(長方形)」と区別するため、角が丸くなっているのが特徴です。

端子の役割:外部との出入り口(開始・終了)

端子(Terminal / Terminator)の役割は非常にシンプルです。

  1. 開始(Start): フローチャートのスタート地点。外部からの入り口。

  2. 終了(End): フローチャートのゴール地点。外部への出口。

つまり、「ここからフローが始まります」「ここでフローが終わります」という区切りを明確にするための記号です。これがあることで、読み手は迷うことなく図を読み進めることができます。

実務でやりがちな誤用:「中断」や「再開」に使わない

現場でよく見かける間違いの一つに、フローの途中で「一時停止(中断)」の意味で端子を使ってしまうケースがあります。

誤用例:フローの途中に端子を置く

例えば、業務フローの中で「上長の承認待ち」という状態を表すために、フローの途中に端子記号で「一時中断」と書いてしまう書き方です。

  • なぜ良くないのか?

    • 端子は「終わり」を意味する記号なので、フローがそこで完結した(終了した)と誤解されやすい。

    • 線が途切れてしまい、プロセスの連続性が見えなくなる。

正しい書き方

何かの待ち時間が発生する場合や、一時的にプロセスが止まる場合は、端子ではなく「処理(長方形)」「準備(六角形)」、あるいは「待機」を表す記号を使い、線をつなげたまま記述するのが一般的です。

待ち時間が発生する場合や、一時的にプロセスが止まる場合は、端子ではなく「処理(長方形)」や「準備(六角形)」、あるいは「待機」を表す記号を使う


「端子はあくまで最初と最後だけ」と覚えておくのが、失敗しないコツです。

紛らわしい!「端子」と「結合子(コネクタ)」の違い

フローチャート初心者の方が最も迷うのが、「端子」と「結合子(コネクタ)」の使い分けです。
どちらも「丸っぽい形」をしていて、「線のつながり」に関係するため混同されがちですが、役割は明確に違います。

特徴

端子 (Terminal)

結合子 (Connector)

形状

カプセル型(横長)

正円(小さい丸)

場所

最初と最後

フローの途中

役割

フロー自体を終わらせる/始める

線をつなぐ(中継する)

線の数

入力のみ、または出力のみ

入力と出力の両方を持つ(論理上)

端子と結合子の比較
  • 端子: 「ここで物語は終わりです」というピリオド。

  • 結合子: 「スペースがないので続きはあちらへ」という「続く(To Be Continued)」マーク。

結合子は、物理的に紙のスペースが足りなくなった時や、線が交差しすぎて見づらくなった時に、線をジャンプさせるために使います。端子の代わりにはなりません。
「結合子」については以下の記事でも詳しく解説しています。

参考記事: 【フローチャート記号解説2】「結合子」記号と使い方

実務で使える!「端子」を書くときの3つのルール

現場で「伝わるフローチャート」を書くための、端子特有のルールとコツを紹介します。

1. 「トリガー」を具体的に書く

実務の現場では、単に「開始」と書くだけでは不十分なことがあります。
「何が起きたらこの業務が始まるのか(トリガー)」を書くのがコツです。

  • △ 開始

  • 「注文メール受信」

  • 「毎月1日の9:00」

  • 「エラー発生時」

こう書くことで、読み手は「いつ、何をきっかけに作業を始めればいいか」が一目でわかります。

2. 「開始」は1つ、「終了」は複数OK

原則として、一つのフローチャートの中に「開始」の端子は1つにします。入口がいくつもあると混乱の元です。
一方で、「終了」の端子は複数あっても構いません。「完了」で終わるルートと、「キャンセル」で終わるルートなど、結果が異なる場合はそれぞれの出口に端子を置きます。

3. 省略せずに書く(特に正式文書)

ホワイトボードで議論する際などは、端子を省略していきなり四角形(処理)から描き始めることもよくあります。
しかし、マニュアルや仕様書として残す場合は必ず端子を描きましょう
端子がないと、「この図は前のページから続いているのか?」「ここで唐突に終わっていいのか?」と読み手に不安を与えてしまいます。

xGrapherを使った端子の活用法

オンライン作図ツールのxGrapherを使えば、規格に沿った正しい端子記号を簡単に配置できます。

ドラッグ&ドロップで迷わない

xGrapherのエディタ画面では、左側のメニューから「フローチャート」セットを選び、カプセル型の端子記号(Terminator)をドラッグ&ドロップするだけです。
円形の「結合子」とも形が明確に区別されているため、間違った記号を使ってしまうミスを防げます。

xGrapherのフローチャート作成画面

スイムレーン図での端子の位置

担当者ごとの役割分担を明確にする「スイムレーン(レーン図)」を描く際、端子をどのレーンに置くかは重要です。
「顧客」レーンに開始端子があれば「顧客のアクションから始まる業務」ですし、「システム」レーンにあれば「自動バッチ処理」かもしれません。

まとめ:端子はフローチャートの「けじめ」

フローチャートの「端子」について解説しました。

  • 役割: 外部との出入り口(開始・終了)。

  • 注意点: 途中の「中断」として使うのは避ける(誤用)。

  • 区別: 丸い「結合子」とは別物。

端子は、業務フローの「けじめ」をつける記号です。
ここをしっかり定義することで、読み手は安心して業務の流れを追うことができます。xGrapherを使って、基本に忠実で分かりやすいフローチャートを作成してみてください。

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xGrapher紹介画像

フローチャートの記号解説シリーズ:

フローチャートの「端子」に関するQ&A

Q1. 端子記号の中に文字は必須ですか?

はい、必須です。空白のままだと、それが開始なのか終了なのか判別できません。「開始/終了」という単語だけでなく、「請求書発行」「対応完了」など、その時点の状態を書くとより親切です。

Q2. 終了端子を省略してもいいですか?

正式な文書では省略すべきではありません。終了端子がないと、図が書きかけなのか、そこで終わっているのか判断がつかないからです。ただし、システム監視フローのように「無限ループ(終わらない)」ことが前提の図では、終了端子が存在しない場合もあります。

Q3. 「端子」は四角形ではダメですか?

手書きやPowerPointのデフォルト図形などで、角の丸くない「長方形」を開始にしてしまうケースが見られますが、これは推奨されません。長方形は「処理(Process)」を表す記号であり、混同を避けるためにも、端子は必ず「角丸(カプセル型)」を使いましょう。

フローチャートの四角は処理(プロセス)を表す

Q4. 1つのフローチャートに「開始」が2つあってもいいですか?

基本的には「開始」は1つに絞るべきです。もし開始条件が複数ある(例:電話で受注する場合と、Webで受注する場合)なら、それらが合流してからメインの処理に進むように描くか、それぞれの入口の手前に条件分岐のような合流ポイントを設けて、開始端子自体は1つにまとめる(または「受注発生」として抽象化する)のがベターです。

Q5. 結合子(コネクタ)を端子の代わりに使ってもいいですか?

いいえ、役割が違います。結合子はあくまで「線をつなぐ」ための記号であり、プロセスの開始や終了を意味しません。読み手が混乱するため、代用は避けましょう。

コラム著者・編集者

xGrapher編集チーム

xGrapher編集チームは、オンラインチャート作成ツールの開発者、技術ライターからなる専任チームです。グラフやチャートに関する実務経験から得た知識を活かし、ユーザーにとって価値のある情報を提供することに努めています。

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