【フローチャート記号解説10】「並列処理」の正しい書き方は?二重線とフォークの使い方を解説

業務フローを整理していると、「ここからはA担当とB担当が同時に作業を開始し、両方が終わったら次の工程に進む」という場面がよくあります。これをフローチャートでは「並列処理(または並行処理)」と呼びます。
これまでフローチャートの基本や条件分岐について解説してきましたが、今回は記号解説シリーズの第10弾として「並列処理」を取り上げます。
実はこの並列処理、「JIS規格の正式な記号」と「実務でよく使われる簡易的な書き方」の2パターンが存在します。今回はそれぞれの書き方と、初心者が陥りやすい「条件分岐(ひし形)」との違いについて解説します。
この記事の内容(目次)
フローチャートの並列処理のJIS規格は「二重線」
まず、最も標準的で公的な文書(仕様書やマニュアル)でも通用する正式な記号から解説します。日本産業規格(JIS X 0121)では、並列処理の記号が定義されています。
記号の形と意味
形: 上下(または左右)を挟む2本の平行線。
意味: ここから複数の処理が同時に開始される、または複数の処理がここで同期(待ち合わせ)される。

[引用: JISX0121 並列処理]
処理Aが終了するまで,処理C,D,E,は開始できない。同様に処理Fは,処理B, C, Dの終了を待たなければならない。しかし,処理Dは,処理Cの開始・終了に関係なく開始又は終了してもよい。
正しい書き方:サンドイッチ構造
並列処理は必ず「入り口」と「出口」をセットで記述します。
開始(分流): 処理の直後に二重線を引き、そこから複数の矢印を出します。
終了(合流): 並列した処理が終わったら、再び二重線を引き、すべての矢印をそこに集めてから次の工程へ進みます。
この「二重線で挟む」書き方が、フローチャートにおける並列処理の基本形です。
実務でよく見る書き方「フォーク」と「ジョイン」
JIS規格ほど厳密さが求められない社内資料や、ホワイトボードでのディスカッションなどでは、二重線を描くのが手間なため、よりシンプルな書き方がされることがあります。それが「フォーク」と呼ばれる形式です。
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フォーク(Y字の逆)での分流
記号(二重線)を使わず、1本の線(矢印)をそのまま枝分かれさせる書き方です。食器のフォークや、道路の分岐点のような形状になります。
書き方: ある処理から線を引き、そこから直接2本以上の線に分岐させます。
ジョイン(Y字)での合流
分かれた処理を一つに戻す際も、線同士を直接結合させます。
書き方: 複数の処理から来た線を1点に集め、そこから次の処理へ線を引きます。
補足:UMLなどの場合
システム開発で使われるUML(アクティビティ図)などでは、この分岐点に「太い黒線(同期バー)」を置くことが一般的です。実務ではこの「太線」を使うスタイルもよく見られますが、基本の考え方は同じです。
間違いやすい!「条件分岐(ひし形)」との決定的な違い
並列処理を書く際、初心者が最もやってしまいがちなミスが、「条件分岐(ひし形)」を使ってしまうことです。見た目は似ていますが、意味は全く異なります。

1. 条件分岐(ひし形)=「OR(または)」
「金額が1000円以上か?」→ YesならAへ、NoならBへ。
このように、どちらか一方の道しか進みません。 AとBを同時に行うことはあり得ないのが条件分岐です。
【フローチャート記号解説3】「条件分岐」3つ・4つ以上ある時は?複数分岐の書き方
2. 並列処理(二重線/フォーク)=「AND(かつ)」
「注文処理」を開始。→ 「在庫引当」かつ「請求書発行」を行う。
このように、分かれた道にあるすべての処理を同時に実行します。
フローチャートを描く際は、「これは『どちらか』を選ぶのか、『両方』やるのか?」を自問して記号を使い分けましょう。
部署をまたぐ並列処理には「スイムレーン」
並列処理が最も輝くのは、複数の部署が絡む業務フローです。
例えば、「営業部」と「経理部」が同時に動くようなケースでは、スイムレーン図(レーン図)を使うと非常に分かりやすくなります。
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実務的なフォーク: コネクタ(線)を分岐させたい場所にドラッグするだけで、自動的に分岐や合流の形状を作ることができます。
記号と線は後で動かしても追従する
xGrapherを使って、規格に沿った正しい図も、手早く作る実務的な図も、用途に合わせて作成してみてください。

まとめ
今回は、フローチャートにおける「並列処理」について解説しました。
正式なJIS規格では「二重線」で挟むのが正解。
実務では線だけで分岐させる「フォーク」形式も使われる。
「条件分岐(ひし形)」と混同しない(「どちらか」ではなく「両方」実行する)。
部署をまたぐ同時進行にはスイムレーンを活用する。
「並列処理」を正しく使いこなすことで、業務のリードタイム短縮やボトルネックの発見にもつながります。ぜひ日々の作図に取り入れてみてください。

フローチャートの並列処理に関するよくある質問 (Q&A)
Q1. 二重線(並行モード)の中に文字を書く必要はありますか?
A1. 基本的には不要です。二重線そのものが「同期・並列」という意味を持つ記号ですので、中に文字は書きません。ただし、何の並列処理か分かりにくい場合は、近くに注釈テキストを置くことはあります。
Q2. 並列処理の終了側(合流)を書かないとどうなりますか?
A2. 終了の二重線(または合流点)がないと、それぞれの処理がバラバラに終わってしまい、「次の工程へいつ進むのか」が不明確になります。「両方の処理が終わってから次に進む」というルールを明確にするために、必ず合流を書きましょう。
Q3. 3つ以上の処理を並列させてもいいですか?
A3. はい、可能です。二重線から3本、4本と矢印を出して、複数の処理を同時に走らせることができます。その場合も、最後は1つの二重線(または合流点)に戻します。
Q4. 縦書きのフローチャートでも二重線は使えますか?
A4. 使えます。上から下へ流れる一般的なフローチャートでは「横向きの二重線」を使いますが、左から右へ流れるレイアウトの場合は「縦向きの二重線」を使って並列処理を表現します。
Q5. UMLの「太い黒線」を使っても間違いではないですか?
A5. UMLアクティビティ図では“同期バー(太線)”が並列処理の定番記号として使われています。ただし、フローチャートの正式記号ではないため、実務で使用するかどうかは社内や業界のルールをご確認ください。
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