【フローチャート記号解説】「ループ(繰り返し)」記号と分岐の使い方

業務の手順やプログラムの流れを可視化する際、「この作業を10回繰り返す」「メールが来るまで待機する」といった、特定の処理を何度も行う場面が出てきます。このような「同じ作業を繰り返す流れ」を、フローチャートでは「ループ」または「繰り返し」と呼びます。
フローチャートでループ処理を正しく表現できると、図全体がシンプルになり、誰が見ても処理の流れを正確に理解できるようになります。この記事では、フローチャートにおけるループ(繰り返し)の基本的な考え方と、具体的な書き方について分かりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
なぜループ処理が必要なの?
もしループ処理を使わなかったらどうなるでしょうか?
例えば、「顧客リストの100人にメールを送る」という作業をフローチャートにするとします。ループを使わなければ、「1人目にメールを送る」→「2人目にメールを送る」→「3人目にメールを送る」…と、同じ「メールを送る」という処理の箱を100個も並べることになってしまいます。
これでは図が縦長になるだけで見づらく、本質的な流れが掴めません。
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ループ処理を用いれば、「リストの最後まで繰り返す」という指示のもと、「メールを送る」という処理を一つ書くだけで表現できます。これにより、フローチャートが簡潔になり、処理の全体像が把握しやすくなるのです。
フローチャートでのループの書き方:2つの主要パターン
フローチャートでループ処理を表現する方法は、主に2つのパターンがあります。
専用の「反復端子(ループ記号)」を使う方法
「条件分岐(ひし形)」と矢印で表現する方法
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どちらを使っても間違いではありませんが、それぞれ特徴があります。順番に見ていきましょう。
パターン1:専用の「反復端子(ループ記号)」を使う書き方
一つ目は、「反復端子(はんぷくたんし)」や「ループ端」と呼ばれる専用の記号を使う方法です。
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この記号は、JIS(日本産業規格)のX0121(情報処理用流れ図)において「反復端子」として定められている記号で、ループの「開始」と「終了」を示します。
ループ開始記号: 上辺が欠けた六角形(または台形)。中に「(変数)= 1 から 10 まで」といった、繰り返しの開始条件や回数を書きます。
ループ終了記号: 下辺が欠けた六角形(または台形)。ループの終わりを示します。
書き方の例:「10回繰り返す」
例えば、「資料を10回印刷する」という処理は以下のようになります。
[画像挿入箇所:反復端子を使ったフローチャートの例。「ループ開始(i=1から10)」「処理(資料を印刷)」「ループ終了」が矢印でつながっている図。]
「ループ開始」記号を置き、「i = 1 から 10 まで」のように回数を指定します。
次に、繰り返したい処理(「資料を印刷」)を置きます。
最後に「ループ終了」記号を置き、矢印を処理からつなぎます。
「ループ終了」記号から「ループ開始」記号へ戻る矢印(図の外側を通ることが多い)と、ループが終わった後の処理へ進む矢印を記述します。
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この書き方は、特に「〇回繰り返す」といった回数が決まっているループ(for文のような処理)を表現するのに適しています。特にシステムフロー図との親和性が高いです。
※フローチャートで使われる記号については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
フローチャートの基本記号と意味を徹底解説!
パターン2:「条件分岐(ひし形)」でループを表現する書き方
二つ目は、「反復端子」を使わず、「条件分岐」のひし形記号を使ってループを表現する方法です。
これは、フローチャートの基本的な記号だけでループを構成できるため、最も一般的で分かりやすい方法とも言えます。特によく利用される記号だけで構成できるため、専用記号を知らない人にも伝わりやすいのが特徴です。

書き方の例:「条件を満たすまで繰り返す」
例えば、「(お腹が)満腹になるまでご飯をよそう」という処理で考えてみましょう。
繰り返したい処理(「ご飯をよそう」)を置きます。
その次に、条件分岐のひし形を置き、「満腹?」という条件を書きます。
条件分岐から「No(まだ満腹ではない)」の矢印を出し、処理(「ご飯をよそう」)の 前 に戻します。
「Yes(満腹だ)」の矢印を出し、次の処理(例:「食事を始める」)へ進めます。
このように、条件分岐の矢印を処理の上に戻すことで、「条件(Yes)を満たすまで処理(No)を繰り返す」という流れを表現できます。
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結局どっち?「反復端子」と「分岐」の使い分け
初心者の方が最も迷うのが、「結局、どちらの書き方を使えばいいの?」という点だと思います。
以下のように使い分けると分かりやすいフローチャートになります。
回数が決まっている場合 (例: 10回, リストの数だけ)
→ 「反復端子(ループ記号)」を使うと、回数の指定が明確でスッキリします。
条件で判断する場合 (例: 〇〇になるまで, エラーがない間)
→ 「条件分岐(ひし形)」を使うと、処理と判断の流れが直感的になります。
迷った場合や、読み手にJIS規格の知識を問いたくない場合
→ 「条件分岐(ひし形)」をおすすめします。
「条件分岐」を使った方法は、フローチャートの最も基本的な記号だけで完結するため、特別な記号を知らない人にも伝わりやすいという大きなメリットがあります。
※フローチャートには他にも様々な種類があります。目的に合わせて使い分けましょう。
フローチャートの種類と特徴を解説!
知っておくと便利!ループ処理の2つの「判定タイミング」
「条件分岐(ひし形)」でループを作る際、条件判定を「処理の前」に置くか「処理の後」に置くかで、挙動が変わる場合があります。
1. 前判定(while型)
処理を行う前に条件を判定する方法です。
「条件を満たしている間、処理を繰り返す」という流れになります。
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特徴:
先に条件をチェックするため、条件を最初から満たしていなければ、処理が一度も実行されない場合があります。(例:リストが最初から空なら、メール送信処理は0回)
2. 後判定(do-while / repeat-until型)
処理を一度行った後に条件を判定する方法です。
「処理を行い、その後 条件を満たしているかチェックする」という流れになります。
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特徴:
先に処理を1回実行するため、最低でも1回は処理が実行されることが保証されます。(例:まず入力を促し、完了ボタンが押されるまで入力を繰り返す)
どちらを使うべきかは、実現したい処理の流れによって決まります。業務フローなどでは、流れを直感的に表現できる「後判定」が使われることも多いです。
ループ処理を含むフローチャートを簡単に作成するには
ここまで解説したループ処理ですが、いざ自分で作図するとなると、矢印を戻したり、記号を配置したりするのが意外と面倒なものです。特に、処理が複雑になってくると見づらくなりがちです。
そんな時は、オンラインのフローチャート作成ツールが便利です。
Webブラウザ上で直感的に使える「xGrapher」なら、記号をドラッグ&ドロップで配置し、クリック操作で簡単に矢印をつなげることができます。条件分岐でループを作る際も、矢印をスムーズに処理の前に戻すことが可能です。

作成したフローチャートは画像でダウンロードしたり、クラウドに保存してチームでの共有や編集も簡単です。複雑なループ処理を含むフローチャートも、xGrapherを使えばすっきりと見やすく作成できます。
xGrapherでフローチャートを作成する
まとめ:ループ(繰り返し)をマスターして分かりやすいフローチャートを
今回は、フローチャートにおける「ループ(繰り返し)」処理の書き方について解説しました。
ループ(繰り返し)とは、「同じ作業を繰り返す流れ」のこと。
ループを使うと、フローチャートが簡潔で分かりやすくなる。
書き方には「反復端子(ループ記号)」を使う方法と「条件分岐(ひし形)」を使う方法がある。
「反復端子」は回数が決まっている場合に便利。
「条件分岐」は条件で判断する場合に便利で、迷ったらこちらを使うのがおすすめ。
判定のタイミング(前判定・後判定)にも意識すると、より正確な流れを表現できる。
ループ処理は、業務フローやシステム設計において避けては通れない重要な要素です。ぜひこの機会にマスターして、誰にでも伝わる分かりやすいフローチャート作成に役立ててください。
フローチャートの基本から学びたい方は、こちらの記事もご覧ください。
フローチャートとは?書き方や記号、作成のコツを徹底解説

【フローチャート記号解説シリーズ】
「ループ(繰り返し)」記号と分岐の使い方
フローチャートの「ループ」に関するQ&A
Q1. フローチャートの反復端子(ループ記号)は使うべきですか?
A1. JIS規格(JIS X 0121)で「反復端子」として定められていますが、必ずこの記号を使わなければならないというわけではありません。解説した通り、「条件分岐(ひし形)」の記号を使ってもループ(繰り返し)を表現することができ、むしろそちらの方が一般的な場合も多いです。回数が決まっているループをスッキリ見せたい場合に使うと効果的です。
Q2. ループの中に、さらにループを入れることはできますか?
A2. はい、できます。これを「二重ループ」や「入れ子(ネスト)ループ」と呼びます。例えば、「(外側ループ)クラス全員について繰り返す」→「(内側ループ)その生徒の全科目の点数について繰り返す」といった処理で使われます。ただし、構造が複雑になりすぎると理解しにくくなるため、見やすさに配慮が必要です。
Q3. 「無限ループ」とは何ですか? フローチャートでどう書きますか?
A3. 「無限ループ」とは、ループの終了条件が永遠に満たされず、処理が止まらなくなってしまう状態を指します。意図しない無限ループはプログラムのバグ(不具合)の原因となります。フローチャート上では、「条件分岐から処理に戻る矢印はあるが、ループから抜け出す矢印(処理の続きへ進む道)がどこにもない」状態として表現されます。
Q4. 前判定と後判定は、どちらを使うべきですか?
A4. 実現したい処理によります。「処理を実行する前に、まず条件をチェックしたい(0回の可能性もある)」なら前判定(while型)を使います。「少なくとも1回は処理を実行してから、条件をチェックしたい」なら後判定(do-while型)を使います。業務フローの図解などでは、直感的に分かりやすい後判定が使われることもよくあります。
Q5. ループの矢印が他の線と交差して見づらくなります。
A5. 矢印の交差は、フローチャートが見づらくなる主な原因です。オンラインツール(xGrapherなど)では、矢印の曲がり方を調整したり、記号の配置を工夫したりすることで、交差を避けやすくなります。また、処理の担当部門が複数ある場合は、「スイムレーン図」を使って流れを整理するのも一つの方法です。
スイムレーン図(部門横断フローチャート)とは?
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