スイムレーン図とは? 担当を明確にする書き方とメリットを解説

「このタスク、前回はAさんがやったけど、今回はBさんだっけ?」
「申請書が承認されるまでに、結局どの部署を経由するんだろう?」
複数の人や部署が関わる仕事では、こうした「誰が」「何を」するのかという責任の所在が曖昧になりがちです。そんな業務の流れと担当範囲を、ひと目でわかるように可視化する便利なツールがスイムレーン図(スイムレーンチャート)です。
この記事では、業務改善の第一歩として非常に強力なスイムレーン図について、その基本的な意味からメリット、簡単な書き方までを分かりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
なぜ必要?スイムレーン図を作成するメリット
スイムレーン図の最大の目的は、プロセスの「担当者」や「部門」を明確にすることです。水泳の「レーン」のように、担当者ごとにエリアを区切ってプロセスを描くため、スイムレーン図と呼ばれています。
[スイムレーン図の一例]
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スイムレーン図を作成することには、主に以下の3つのメリットがあります。
1. 責任の所在が明確になる
最大のメリットはこれです。各タスクがどの部署(またはシステム、担当者)のレーンにあるかで、誰がそのタスクに責任を持つのかが一目瞭然になります。これにより、「あの件は誰の担当だっけ?」といった混乱や、タスクの漏れを防ぐことができます。
2. プロセス全体の流れと部門間の連携がわかる
プロセスがレーンをまたいで(=担当者が変わって)進んでいく様子が視覚的にわかります。これにより、部門間でどのような情報の受け渡し(インプット・アウトプット)が発生しているのかを、関係者全員が正確に把握できます。
3. ボトルネックや非効率な部分を発見しやすい
「特定のレーン(担当者)にだけ処理が集中している」
「何度も同じレーンを行ったり来たりしている(手戻りが多い)」
「A部署からB部署への連携が複雑すぎる」
といった、業務の非効率な点や、プロセスが滞る原因(ボトルネック)を発見するのに非常に役立ちます。
スイムレーン図とフローチャート、業務フロー図の違い
「スイムレーン図」と「フローチャート」や「業務フロー図」は、それぞれどう違うのでしょうか?
まず、「フローチャート」は、プロセスの「手順」や「流れ」を記号と矢印で示す図の総称です。(詳しくは フローチャートとは? をご覧ください)
次に、「業務フロー図」は、そのフローチャートの中でも特に「業務(ビジネス)」の流れを描いたものです。多くの場合、「フローチャート」と「業務フロー図」はほぼ同じ意味で使われます。
そして、「スイムレーン図」は、これらフローチャート(業務フロー図)の一種であり、その中でも「誰が(どの部門が)」その手順を実行するのかという「責任区分」の軸を追加した図のことを指します。
[フローチャートと業務フロー図とスイムレーン図の関係性]
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[フローチャートとスイムレーン図の違い]
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それぞれの焦点をまとめると、以下のようになります。
一般的な業務フロー図(フローチャート):
焦点: プロセスの「手順」や「流れ」。
課題: 誰がそのタスクを行うのかが、図だけでは分かりにくいことがある。
スイムレーン図:
焦点: 「手順」に加えて、「担当者(部門)」。
特徴: 担当者ごとの「レーン」で区切り、責任の所在を明確にする。
つまり、複数の部門や担当者が関わる複雑なプロセスを整理し、「誰が」を明確にしたい場合は、一般的な業務フロー図よりもスイムレーン図が最適です。
スイムレーン図で使用できる記号は?
スイムレーン図は業務フロー図やフローチャートの一種であるため、プロセスを表現するために使用する基本的な記号は、一般的なフローチャートと共通です。
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端子(開始/終了): 角丸の四角形。プロセスの「開始」と「終了」地点を示します。
処理: 長方形。具体的な作業やタスク(例:「申請書を作成する」)を示します。
判断: ひし形。「はい/いいえ」や「OK/NG」などで答えられる分岐点(例:「内容に不備あり?」)を示します。
線(矢印): 記号と記号をつなぎ、プロセスの流れや順序を示します。
これらの記号にはJIS(日本産業規格)などでルールが定められていますが、まずは主要な記号を覚えておけば、基本的なスイムレーン図を作成できます。
参考記事: フローチャートのJIS規格記号解説
スイムレーン図はいつ使う?主な活用シーン
スイムレーン図は、特に以下のようなシーンで活躍します。
業務プロセスの可視化と改善(BPM):
現状の業務フローをスイムレーン図に書き出すことで、課題点を洗い出し、改善策を検討する(To-Beモデル)際の共通認識として使えます。複数部門が関わるプロジェクトの計画:
プロジェクトの各フェーズで、営業部、開発部、サポート部がそれぞれ何を行うかを明確にするために使います。システム開発における要件定義:
新しいシステムと、それを利用するユーザー(または既存の別システム)とのやり取りを整理する際にも用いられます。(UMLのアクティビティ図としても知られています)新入社員向けの業務マニュアル:
業務全体の流れと、他部署との関わり方を理解してもらうための資料としても有効です。
【簡単4ステップ】スイムレーン図の書き方・作り方
難しそうに見えますが、基本的なスイムレーン図は簡単なステップで作成できます。ここでは、オンラインツールなどを使うことを想定した、基本的な書き方を4ステップで紹介します。
STEP 1: プロセスの範囲(開始と終了)を決める
まず、どの業務プロセスを描くのかを明確にします。「顧客からの問い合わせ発生」から「回答完了」まで、のように、プロセスの「開始」と「終了」を定義します。
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STEP 2: 担当者(レーン)を洗い出す
そのプロセスに関わる全ての「担当者」を洗い出します。これは「営業部」「サポート部」といった部門の場合もあれば、「顧客」「システム」「担当者A」といった役割や個人の場合もあります。
洗い出した担当者の数だけ、縦または横に「レーン」を用意します。
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STEP 3: タスク(処理)を時系列に配置する
プロセスを構成する個々のタスク(作業や判断)を、時系列に沿って洗い出します。
そして、「そのタスクを誰がやるのか」に基づき、対応する担当者のレーン内にタスクを配置していきます。
このとき、フローチャートの基本記号を使うと、より分かりやすくなります。
開始/終了: 角丸の四角形
処理/タスク: 長方形
判断/分岐: ひし形
各記号の詳しい使い方は、フローチャートの種類と記号 の記事も参考にしてください。
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STEP 4: 矢印で流れをつなぐ
STEP 3で配置したタスクを、プロセスの流れに沿って矢印(線)でつなぎます。
このとき、レーンをまたいで矢印が引かれる部分が、「担当者間で業務(情報)が引き渡されるポイント」となります。
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たったこれだけで、スイムレーン図の基本的な形は完成です。
スイムレーン図を上手に書くためのコツ
より伝わりやすいスイムレーン図を作成するために、いくつか簡単なコツを紹介します。
時系列は一方向にする:
基本的に、時間の流れは「左から右へ」または「上から下へ」のどちらかに統一します。逆流するような矢印は、プロセスが複雑に見える原因になるため、できるだけ避けます。(手戻りを表現する場合は、明確にその旨がわかるように描きます)
記号や色を使いすぎない:
スイムレーン図の目的は「責任区分」を明確にすることです。フローチャートの記号や色分けを細かくしすぎると、かえって見づらくなります。基本的な記号に絞り、シンプルに保つことを心がけましょう。
参考記事: フローチャートの色分け術:見やすさが変わる配色ルールと意味を解説まずはシンプルに描いてみる:
最初から完璧な図を描こうとする必要はありません。まずはオンラインの作図ツールなどで大まかに描き、関係者と共有しながら修正していく(改善サイクルを回す)ことが重要です。
オンラインで手軽にスイムレーン図を作成しよう
スイムレーン図は、業務改善やプロジェクト管理のための強力なツールです。しかし、高機能なBPM(ビジネスプロセスマネジメント)専用ツールは操作が複雑だったり、導入コストが高かったりすることもあります。
「まずは現状のプロセスをサクッと可視化したい」
「チームですぐに共有して、改善の議論を始めたい」
そのような場合は、オンラインで手軽に使えるグラフ作成ツールが便利です。
私たち xGrapher でも、直感的な操作でスイムレーン図を作成できる機能を提供しています。複雑な記法(BPMNなど)を覚える必要はなく、ブラウザ上で簡単にレーンを追加し、タスクを配置して、業務フローの可視化をスタートできます。

まずは手軽なツールで「たたき台」を作り、チームで議論を始める第一歩として、xGrapherのスイムレーン機能をぜひお試しください。
まとめ
スイムレーン図は、単なるプロセスの流れだけでなく、「誰が」そのプロセスを担当するのかという「責任区分」を明確にするための非常に有効な図です。
責任の所在を明確にし、タスク漏れを防ぐ
部門間の連携をスムーズにする
業務のボトルネックや非効率な点を発見する
これらのメリットにより、業務改善やプロジェクト管理の現場で広く活用されています。
まずは簡単なプロセスの可視化から、スイムレーン図の作成にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

スイムレーン図に関するQ&A
Q1: スイムレーン図の「レーン」は、縦書きと横書き、どちらが正しいですか?
A1: どちらも正解です。紙やスライドのレイアウトに合わせて、見やすい方を選んで問題ありません。
Q2: レーンは何を基準に分ければよいですか?
A2: その図で何を明らかにしたいかによります。「営業部」「開発部」といった部門で分けるのが一般的ですが、「顧客」「担当者」「システム」といった役割(ロール)で分けることも非常に多いです。プロセスの実態に合わせて設定してください。
Q3: 「業務フロー図」や「部門連係フローチャート」とどう違いますか?
A3: 業務フロー図は「業務の流れ」を示す図全般を指します。スイムレーン図は、その業務フロー図の中でも特に「担当者」や「部門」ごとのレーン(区分)を設けて、責任の所在を明確にした図のことです。「部門連係フローチャート」も、部門間の連携を明確にするための図であり、スイムレーン図とほぼ同じ目的・構造で使われることが多いです。
Q4: BPMNとは何ですか?スイムレーン図とどう違いますか?
A4: BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)は、業務プロセスを記述するための国際標準のルール(記法)です。BPMNでも「プール」や「レーン」といったスイムレーン図と同様の概念が使われますが、より厳密な記号のルールが定められています。スイムレーン図は、BPMNで使われる概念の基本的な部分(特に責任区分)を取り入れた、より広義のフローチャート手法と言えます。
Q5: スイムレーン図はPowerPointやExcelでも作れますか?
A5: はい、作成可能です。ただし、PowerPointやExcelは本来、図形描画ツールではないため、タスクの追加や移動、矢印の引き直しといった修正作業に手間がかかる場合があります。xGrapherのような専用の作図ツールを使うと、要素の配置や線の接続が簡単に行えるため、修正やメンテナンスが格段に楽になります。
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