特性要因図の「4M」とは?要因分析の切り口・具体例と書き方を徹底解説

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製造現場や業務改善のプロジェクトにおいて、「なぜミスが起きたのか?」「なぜ品質にバラつきが出るのか?」といった問題に直面することは日常茶飯事です。こうした問題の根本原因(真因)を探るために使われるのが、特性要因図(別名:フィッシュボーン図)です。

しかし、いざ特性要因図を書こうとしても、「どんな要因を書き出せばいいかわからない」「思いつきで書いてしまい、抜け漏れが多い」といった悩みを抱える方は少なくありません。

そこで役に立つのが「4M(ヨンエム)」というフレームワークです。4Mという4つの視点に沿って要因を分類・整理することで、ヌケ・モレのない論理的な分析が可能になります。本記事では、特性要因図を強力な分析ツールに変える「4M」の使い方と、具体的な書き方を徹底解説します。

参考記事: 特性要因図の基礎から学びたい方は、まずこちらの記事をご覧ください。
特性要因図(フィッシュボーン図)とは?オンラインで簡単作成!書き方と分析例を徹底解説

4Mの具体的な内訳と要因の洗い出し方

4Mとは、製造業の品質管理(QC)で使われる以下の4つの英単語の頭文字をとった言葉です。

  1. Man(人)

  2. Machine(機械・設備)

  3. Material(材料)

  4. Method(方法)

4Mの中身

特性要因図を作成する際、魚の骨の「大骨」にこの4Mを配置することで、要因を網羅的に洗い出すことができます。それぞれの要素について、どのような「要因(切り口)」が考えられるか具体的に見ていきましょう。

4Mを使用した特性要因図

1. Man(人)

作業者や担当者本人に起因する要因です。「人のせい」にするのではなく、「人の行動や状態」に焦点を当てます。

  • 要因の例:

    • スキル不足、経験不足

    • 疲労、体調不良、モチベーション低下

    • 不注意、うっかりミス、勘違い

    • 教育・訓練の不足

    • 配置(適材適所かどうか)

2. Machine(機械・設備)

使用している機械、ツール、設備、治具などに起因する要因です。

  • 要因の例:

    • 機械の故障、老朽化、摩耗

    • 精度の狂い、設定ミス

    • メンテナンス不足、点検漏れ

    • 使いにくさ、レイアウトの不備

    • PCやソフトウェアのバグ・遅延

3. Material(材料・部品)

製品の材料や、業務に使用するデータ、素材などに起因する要因です。

  • 要因の例:

    • 材料の品質不良、バラつき

    • 在庫の劣化、保管状態の悪さ

    • 仕入れ先の変更

    • 部品の寸法違い

    • (事務作業の場合)入力データの誤り、情報の欠損

4. Method(方法)

作業の手順、ルール、工程などに起因する要因です。ここが不明確だと、人によってやり方が変わってしまいます。

  • 要因の例:

    • マニュアルの不備、わかりにくさ

    • 作業標準がない、または守られていない

    • 無理な工程スケジュール

    • 非効率な手順、安全確認の欠如

    • 温度や圧力などの加工条件設定

4Mだけじゃない?「5M」「6M」やサービス業向け「4S」

基本は4Mですが、業界や分析したい内容によっては、視点を拡張したり変更したりすることがあります。

検査の視点を加えた「5M」

4Mに Measurement(検査・測定) を加えたものです。品質管理において「測る基準や道具」が正しいかどうかは非常に重要であるため、独立した要素として扱います。

4Mに Measurement(検査・測定) を加えた5M

Measurementの例

計測器の精度・校正状況、検査基準の曖昧さ、検査員の視力、サンプリング方法など。
例:「ノギスの目盛りが摩耗して読み間違えた」「検査マニュアルの合否基準が不明確だった」

環境を加えた「5M + 1E」

上記の5Mに Environment(環境) を加えたフレームワークです。製品や作業に影響を与える周囲の状況を考慮します。

Environmentの例

温度、湿度、照明の明るさ、騒音、職場の雰囲気など。
例:「湿度が高くて材料が変質した」「暗くて手元が見えにくかった」

4Mに Environment(環境) を加えた「5M+1E」

管理体制を加えた「6M」

5Mに Management(マネジメント) を加えたものです。現場レベルだけでなく、管理・運営側の要因を探る際に使われます。

5Mに Management(マネジメント) を加えた6M

Managementの例:

管理体制の不備、教育計画の有無、人員配置の方針、情報伝達のフローなど。
例:「そもそも要員計画に無理があった」「トラブル時の報告ルートが決まっていなかった」

サービス業・事務職向けの「4S」

製造業由来の4Mは「機械」や「材料」という言葉がオフィスワークやサービス業には馴染まない場合があります。その場合は4Sに置き換えるとスムーズです。

  1. Surroundings(環境): オフィス環境、場所、顧客層

  2. Suppliers(供給者): 協力会社、システムベンダー

  3. Systems(システム): 使用しているITツール、データベース、仕組み

  4. Skills(スキル): 従業員の能力、接客技術

サービス業・事務職向けの「4S」

参考記事: こうしたフレームワークはQC7つ道具の一部です。全体像を知りたい方は以下も参考にしてください。
QC7つ道具・新QC7つ道具とは?違いと使い方を徹底解説【初心者向け】

4Mを使った特性要因図の書き方ステップ

実際に4Mを使って特性要因図を作成する手順を解説します。

STEP 1:「結果(問題)」を決める

まず、解決したい問題(特性)を右端に書き、左に向かって太い矢印(背骨)を引きます。

  • 例:「製品Aの寸法不良が発生した」

STEP 2:大骨として「4M」を配置する

背骨に向かって4本の大骨を引き、それぞれに「Man」「Machine」「Material」「Method」と記入します。これが思考のガイドラインになります。

STEP 3:小骨・孫骨を深掘りする(なぜなぜ分析)

各Mについて、「なぜそれが起きたのか?」と考えながら要因(小骨)を書き足していきます。さらに「それはなぜか?」と深掘りして孫骨を書きます。

  • 例:Machine(機械)の大骨 → (小骨)ドリルがブレた → (孫骨)留め具が緩んでいた

特性要因図の例

STEP 4:真因を特定し、対策を立てる

要因が出尽くしたら、その中で「これが一番影響が大きそうだ」と思われる要因(重要要因)を絞り込みます。重要要因に対して具体的な改善策を立案します。

ポイント: どの要因が重要か迷った場合は、数値データを用いてパレート図を作成し、優先順位をつけるのが定石です。
ABC分析とパレート図の関係とは?作り方から分析のコツまで徹底解説

手書きやExcelは大変?ツールを使えば分析に集中できる

特性要因図は、ホワイトボードに手書きしたり、Excelのオートシェイプで作成したりすることが多いですが、以下のような悩みはありませんか?

  • 「矢印の線を引いたり、位置を調整したりするのに時間がかかる」

  • 「後から要因を追加しようとすると、全部ずらさないといけない」

  • 「手書きだと汚くて、チーム共有や資料化が面倒」

要因分析の本質は「考えること」であり「図形を描くこと」ではありません。作図の手間をなくし、スムーズに思考を整理したい方には、オンライン作図ツールxGrapherがおすすめです。

xGrapherを使うメリット

  • 専用テンプレート: フィッシュボーン図のテンプレートがあるため、4Mの枠組みがすでに用意されています。

  • 直感的な操作: クリック&ドラッグだけで枝を追加・移動でき、レイアウト修正の手間がいりません。

  • 共有が簡単: オンラインで作成してそのままURLで共有、または画像としてエクスポートして報告書に貼付できます。

登録不要で今すぐ試せるので、ぜひ一度使ってみてください。

xGrapher特性要因図作成画面

無料で特性要因図を作成してみる(xGrapher)

まとめ

特性要因図を作成する際、「4M」のフレームワークを活用することで、要因のヌケ・モレを防ぎ、多角的な視点で問題分析ができるようになります。

  • Man(人): スキル、疲労、不注意

  • Machine(機械): 故障、精度、整備不良

  • Material(材料): 品質のバラつき、在庫状態

  • Method(方法): 手順書、作業条件

4つの視点を意識して「なぜ?」を繰り返すことが、根本的な問題解決への近道です。そして、その思考プロセスを止めないために、使いやすいツールの活用も検討してみてください。

xGrapher紹介画像

特性要因図と4Mに関するQ&A

Q1. 4Mの順番に決まりはありますか?

A1. 特に厳密な決まりはありませんが、一般的には図の上側に「Man・Machine」、下側に「Material・Method」を配置することが多いです。書きやすい順番、あるいは思いつきやすい項目から埋めていって構いません。

Q2. 4M以外の項目を大骨にしてもいいですか?

A2. はい、問題ありません。4Mはあくまで「要因を見落とさないためのガイド」です。例えば営業部門であれば「Market(市場)」「Money(資金)」を入れたり、環境要因が重要なら「Environment」を独立させたりと、解決したい課題に合わせて柔軟に変更してください。

Q3. 特性要因図は一人で作るものですか?

A3. 一人で作ることもできますが、複数人のチームで行うブレインストーミングの方が効果的です。異なる立場(現場担当、管理者、技術者など)の人が集まることで、自分ひとりでは気づかなかった「4M」の要因が見つかりやすくなります。

Q4. 要因が出すぎて、どれから手を付ければいいかわかりません。

A4. 特性要因図は「要因を洗い出す」ためのツールであり、「優先順位を決める」ツールではありません。要因が出揃ったら、チームで話し合って重要そうなものに丸をつけるか、データ収集を行ってパレート図を作成し、影響度の大きいものから対策を行いましょう。
パレート図とは?見方から簡単な作り方まで、わかりやすく徹底解説!

Q5. パソコンで簡単に作るおすすめの方法は?

A5. ExcelやPowerPointでも作成可能ですが、線の調整が手間になります。xGrapherのような専用のオンライン作図ツールを使うと、テンプレートからすぐに書き始められ、修正も簡単なのでおすすめです。
xGrapherで特性要因図を作る

コラム著者・編集者

xGrapher編集チーム

xGrapher編集チームは、オンラインチャート作成ツールの開発者、技術ライターからなる専任チームです。グラフやチャートに関する実務経験から得た知識を活かし、ユーザーにとって価値のある情報を提供することに努めています。

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