薔薇戦争(1455〜1485年)は、プランタジネット家傍流のランカスター家(赤薔薇)とヨーク家(白薔薇)の間で戦われたイングランド王位をめぐる権力闘争です。
精神錯乱に陥ったヘンリー6世の統治能力の欠如により、王妃マーガレット・オブ・アンジューが実質的にランカスター派を率い、ヨーク公リチャードが王位を請求して1455年に内乱が勃発しました。「キングメーカー」ウォリック伯リチャード・ネヴィルの寝返りや、エドワード4世の即位と退位、リチャード3世の簒奪など激しい権力の変動を経て、最終的に1485年のボズワースの戦いでランカスター派のヘンリー・テューダーがリチャード3世を破り、ヘンリー7世として即位。ヨーク家のエリザベス・オブ・ヨークと結婚して両家を統合し、テューダー朝を開きました。この戦争は『ゲーム・オブ・スローンズ』のモデルとしても知られています。
登場人物一覧
ヘンリー6世
ランカスター朝のイングランド王(在位1422-1461年、復位1470-1471年)。生後9ヶ月で即位し、百年戦争の敗戦後に精神錯乱に陥った。平和主義で軍事や政治への関心・能力に乏しく、統治能力の欠如が薔薇戦争の原因となった。1461年にエドワード4世に廃位され、1470年にウォリック伯により一時復位するも、1471年にロンドン塔で死去した。
マーガレット・オブ・アンジュー
ヘンリー6世の王妃(1429-1482年)。フランス出身で、夫の精神的な弱さを補うために積極的に政治に関与し、ランカスター軍の実質的なリーダーとして活動した。息子エドワード王太子の王位継承権を守るためにヨーク派に徹底抗戦した。1470年にはかつての宿敵ウォリック伯と和解して同盟を結んだが、1471年のテュークスベリーの戦いで敗北し捕らえられた。
エドワード王太子
エドワード・オブ・ウェストミンスター(1453-1471年)。ヘンリー6世とマーガレット・オブ・アンジューの一人息子で、プリンス・オブ・ウェールズ。史上唯一戦死したプリンス・オブ・ウェールズとして知られる。1470年にウォリック伯の末娘アン・ネヴィルと結婚したが、1471年のテュークスベリーの戦いで戦死した。
マーガレット・ボーフォート
ランカスター家傍系ボーフォート家の女性(1443-1509年)。ヘンリー7世の母で、息子の王位獲得のために生涯を捧げた。大陸に亡命するヘンリーの身を案じて逃亡を助け、ヨーク家のエリザベス・ウッドヴィルと同盟を結んでヘンリーとエリザベス・オブ・ヨークの婚約を取り付けた。テューダー朝成立の陰の立役者。
ヘンリー7世
リッチモンド伯ヘンリー・テューダー(1457-1509年)。マーガレット・ボーフォートの唯一の子で、テューダー朝の始祖。ランカスター派の最有力王位継承候補として長年フランスに亡命生活を送った。1485年にウェールズからイングランドに上陸し、ボズワースの戦いでリチャード3世を破ってヘンリー7世として即位。エドワード4世の王女エリザベス・オブ・ヨークと結婚して両家を統合し、テューダー朝を開いた。
ヨーク公リチャード
第3代ヨーク公リチャード・プランタジネット。エドワード3世の曾孫で、母方からマーチ伯の王位継承権を受け継いだ。ヘンリー6世の無能な統治に反発して王位を請求し、1455年にセント・オールバーンズの戦いで薔薇戦争を開始した。ヘンリー6世から死後の王位継承の約束を取り付けたが、1460年のウェイクフィールドの戦いでマーガレット・オブ・アンジュー率いるランカスター軍に敗れて戦死した。
ウォリック伯
第16代ウォリック伯リチャード・ネヴィル(1428-1471年)。「キングメーカー」の異名を持つ大貴族で、薔薇戦争のキーパーソン。当初ヨーク派としてヨーク公リチャードを支援し、その死後は息子エドワード(後のエドワード4世)を擁立して即位させた。しかしエドワード4世がエリザベス・ウッドヴィルと秘密結婚したことで対立し、ランカスター派に寝返ってヘンリー6世を復位させた。1471年のバーネットの戦いでエドワード4世に敗れて戦死した。
エドワード4世
ヨーク朝初代イングランド王(1442-1483年、在位1461-1470年、1471-1483年)。ヨーク公リチャードの次男(兄ヘンリーが早世したため実質的な長男)で、父の戦死後にウォリック伯の支援を得てヘンリー6世を廃位し即位した。1464年にエリザベス・ウッドヴィルと身分違いの秘密結婚をしたことでウォリック伯と対立し、一時退位を余儀なくされた。1471年にブルゴーニュ公の援助で復帰し、バーネットの戦いとテュークスベリーの戦いで勝利してヨーク朝を再建した。
エリザベス・ウッドヴィル
エドワード4世の王妃(1437頃-1492年)。元はランカスター派のサー・ジョン・グレイの未亡人で、1464年にエドワード4世と秘密結婚した。この結婚がウォリック伯の反発を招き薔薇戦争の転機となった。ウッドヴィル一族の急速な台頭は旧来の貴族の怒りを買った。エドワード4世の死後、リチャード3世に対抗するためにマーガレット・ボーフォートと同盟を結び、娘エリザベスとヘンリー・テューダーの婚約を実現させた。
リチャード3世
ヨーク朝最後のイングランド王(1452-1485年、在位1483-1485年)。ヨーク公リチャードの子で、エドワード4世の弟。兄エドワード4世の死後、護国卿として甥のエドワード5世の後見となったが、エドワード5世とその弟をロンドン塔に幽閉して王位を簒奪した。ウォリック伯の娘アン・ネヴィルと結婚していた。1485年のボズワースの戦いでヘンリー・テューダーに敗れて戦死し、薔薇戦争は終結した。
エリザベス・オブ・ヨーク
エドワード4世とエリザベス・ウッドヴィルの王女(1466-1503年)。テューダー朝の創始者ヘンリー7世の王妃となり、両家の統合の象徴となった。母エリザベス・ウッドヴィルとマーガレット・ボーフォートの同盟によりヘンリー・テューダーとの婚約が成立し、1486年に結婚。この結婚によりランカスター家とヨーク家の対立が終結し、テューダー朝が確立された。ヘンリー8世の母。
アン・ネヴィル
ウォリック伯リチャード・ネヴィルの末娘(1456-1485年)。薔薇戦争に翻弄された生涯を送った。1470年にウォリック伯とマーガレット・オブ・アンジューの同盟の証として、ランカスター派のエドワード王太子と結婚したが、テュークスベリーの戦いで夫は戦死。その後1472年にヨーク派のリチャード(後のリチャード3世)と再婚し、リチャード3世の即位により王妃となった。
関係性一覧
- ヘンリー6世 →夫婦 →マーガレット・オブ・アンジューヘンリー6世 は マーガレット・オブ・アンジュー に対して「夫婦」の関係です。
- ヘンリー6世 →父→息子 →エドワード王太子ヘンリー6世 は エドワード王太子 に対して「父→息子」の関係です。
- マーガレット・オブ・アンジュー →母→息子 →エドワード王太子マーガレット・オブ・アンジュー は エドワード王太子 に対して「母→息子」の関係です。
- マーガレット・ボーフォート →母→息子 →ヘンリー7世マーガレット・ボーフォート は ヘンリー7世 に対して「母→息子」の関係です。
- ヘンリー7世 →夫婦(両家統合) →エリザベス・オブ・ヨークヘンリー7世 は エリザベス・オブ・ヨーク に対して「夫婦(両家統合)」の関係です。
- ヨーク公リチャード →父→息子 →エドワード4世ヨーク公リチャード は エドワード4世 に対して「父→息子」の関係です。
- ヨーク公リチャード →父→息子 →リチャード3世ヨーク公リチャード は リチャード3世 に対して「父→息子」の関係です。
- エドワード4世 →兄弟 →リチャード3世エドワード4世 は リチャード3世 に対して「兄弟」の関係です。
- エドワード4世 →秘密結婚(1464年) →エリザベス・ウッドヴィルエドワード4世 は エリザベス・ウッドヴィル に対して「秘密結婚(1464年)」の関係です。
- エドワード4世 →父→娘 →エリザベス・オブ・ヨークエドワード4世 は エリザベス・オブ・ヨーク に対して「父→娘」の関係です。
- エリザベス・ウッドヴィル →母→娘 →エリザベス・オブ・ヨークエリザベス・ウッドヴィル は エリザベス・オブ・ヨーク に対して「母→娘」の関係です。
- リチャード3世 →夫婦(1472年結婚) →アン・ネヴィルリチャード3世 は アン・ネヴィル に対して「夫婦(1472年結婚)」の関係です。
- ウォリック伯 →父→末娘 →アン・ネヴィルウォリック伯 は アン・ネヴィル に対して「父→末娘」の関係です。
- エドワード王太子 →最初の夫婦(1470年) →アン・ネヴィルエドワード王太子 は アン・ネヴィル に対して「最初の夫婦(1470年)」の関係です。
- ウォリック伯 →擁立→のち対立 →エドワード4世ウォリック伯 は エドワード4世 に対して「擁立→のち対立」の関係です。
- ウォリック伯 →支援・協力 →ヨーク公リチャードウォリック伯 は ヨーク公リチャード に対して「支援・協力」の関係です。
- ウォリック伯 →復位させる(1470年) →ヘンリー6世ウォリック伯 は ヘンリー6世 に対して「復位させる(1470年)」の関係です。
- ウォリック伯 →宿敵→同盟(1470年) →マーガレット・オブ・アンジューウォリック伯 は マーガレット・オブ・アンジュー に対して「宿敵→同盟(1470年)」の関係です。
- ヨーク公リチャード →王位を請求・反乱 →ヘンリー6世ヨーク公リチャード は ヘンリー6世 に対して「王位を請求・反乱」の関係です。
- マーガレット・オブ・アンジュー →撃破(ウェイクフィールド) →ヨーク公リチャードマーガレット・オブ・アンジュー は ヨーク公リチャード に対して「撃破(ウェイクフィールド)」の関係です。
- ヘンリー7世 →ボズワースで撃破 →リチャード3世ヘンリー7世 は リチャード3世 に対して「ボズワースで撃破」の関係です。
- リチャード3世 →兄の死後、遺児を廃位し簒奪 →エドワード4世リチャード3世 は エドワード4世 に対して「兄の死後、遺児を廃位し簒奪」の関係です。
- エリザベス・ウッドヴィル →同盟(子の婚約) →マーガレット・ボーフォートエリザベス・ウッドヴィル は マーガレット・ボーフォート に対して「同盟(子の婚約)」の関係です。



