紀元前1世紀、共和政ローマ末期の激動の時代に、二度にわたる「三頭政治」が行われました。
第1回三頭政治(前60年〜前53年)では、カエサル・ポンペイウス・クラッススが私的な密約を結び、元老院に対抗して権力を分け合いました。しかしクラッススのパルティア遠征での戦死(前53年)により崩壊し、カエサルとポンペイウスの内戦へと発展します。
第2回三頭政治(前43年〜前36年)では、カエサル暗殺後にオクタウィアヌス・アントニウス・レピドゥスが法的に認められた共同統治体制を築きました。やがてレピドゥスが失脚し、アントニウスがエジプトのクレオパトラと結んだことでオクタウィアヌスとの対立が深まり、前31年のアクティウムの海戦でオクタウィアヌスが勝利。ローマは帝政へと移行していきます。
登場人物一覧
カエサル
ガイウス・ユリウス・カエサル(前100年〜前44年)。共和政ローマ末期の政務官・文筆家。第1回三頭政治の一角として執政官に当選し、約8年にわたるガリア遠征でガリアを征服。ポンペイウスとの内戦に勝利して終身独裁官に就任したが、前44年3月15日にポンペイウス劇場の議事堂でブルートゥスらに暗殺された。遺言でオクタウィアヌスを養子に指名。『ガリア戦記』の著者としても知られる。
ポンペイウス
グナエウス・ポンペイウス・マグヌス(前106年〜前48年)。騎士階級出身の軍人・政治家。スパルタクスの反乱での残党掃討、地中海の海賊をわずか3ヶ月足らずで平定、ミトリダテス戦争の勝利などで名声を高めた。第1回三頭政治ではヒスパニアの支配権を得た。カエサルの娘ユリアを妻としたが、ユリアの死後カエサルと対立し元老院派に転じた。前48年ファルサロスの戦いでカエサルに敗れ、エジプトで暗殺された。
クラッスス
マルクス・リキニウス・クラッスス(前115年頃〜前53年)。ローマ史上屈指の大富豪で「富者(Dives)」の異名を持つ。高利貸や鉱山経営で巨万の富を築いた。スパルタクスの反乱を鎮圧して名声を高め、第1回三頭政治の一角を占めた。軍事的功績でカエサルやポンペイウスに対抗しようとパルティアへの遠征を決断したが、前53年カルラエの戦いで戦死。その死が三頭政治崩壊の引き金となった。
オクタウィアヌス
ガイウス・オクタウィアヌス(前63年〜後14年)。カエサルの姪の息子(大甥)であり、カエサルの遺言により養子に指名された。第2回三頭政治の一角としてアントニウス・レピドゥスと共同統治を行い、前36年にレピドゥスを失脚させ、前31年のアクティウムの海戦でアントニウス・クレオパトラ連合軍を破った。前27年に元老院から「アウグストゥス」の称号を贈られ、ローマ帝国初代皇帝となった。
アントニウス
マルクス・アントニウス(前83年〜前30年)。カエサルの最も信頼の深い部将としてガリア遠征やポンペイウスとの内戦で活躍した。第2回三頭政治では東方属州を支配。オクタウィアヌスの姉オクタウィアを妻としたが、エジプトの女王クレオパトラと結び離縁。前31年アクティウムの海戦でオクタウィアヌスに敗れ、翌年アレクサンドリアで自殺した。
レピドゥス
マルクス・アエミリウス・レピドゥス(前89年頃〜前13年)。カエサルの部将で、第2回三頭政治ではアントニウスとオクタウィアヌスの仲介役を果たし、アフリカの属州を勢力圏とした。しかし三頭の中では最も影響力が弱く、前36年にオクタウィアヌスの打倒を画策するも頓挫し、ほとんどの役職を剥奪されて政治的に失脚した。
クレオパトラ
クレオパトラ7世(前69年〜前30年)。プトレマイオス朝エジプト最後の女王。マケドニア系ギリシア人の血統。カエサルとの間に息子カエサリオンをもうけた。カエサル死後、前41年にアントニウスと出会い前37年に正式に結婚。ローマの有力者との結びつきでエジプトの存続を図ったが、前31年アクティウムの海戦で敗れ、翌年アレクサンドリアで自殺した。プトレマイオス朝はここに滅亡した。
ユリア
ユリア・カエサリス(前83/82年〜前54年)。カエサルの娘。第1回三頭政治の結束を強化するため、父カエサルによってポンペイウスに嫁がされた。ポンペイウスとの夫婦仲は良好で、ローマ市民からも愛された。前54年に出産時の産褥で死去。ユリアの死がカエサルとポンペイウスの関係に亀裂を生じさせ、三頭政治崩壊の一因となった。
キケロ
マルクス・トゥッリウス・キケロ(前106年〜前43年)。共和政ローマ末期の政治家・弁護士・文筆家・哲学者。元老院の代表的論客として共和政の擁護に尽力した。カエサル暗殺後はアントニウスを激しく弾劾する演説「ピリッピカ」を行ったが、第2回三頭政治の成立後、アントニウスの要求によりプロスクリプティオ(公敵追放令)の名簿に載せられ、前43年に刺客により暗殺された。
小カトー
マルクス・ポルキウス・カト・ウティケンシス(前95年〜前46年)。共和政ローマの政治家・哲学者。大カトーの曾孫。ストア派哲学の信奉者で清廉潔白な人物として知られた。共和政の伝統を守る立場からカエサルの独裁に一貫して反対した。内戦でポンペイウス側につき、カエサルが勝利した後の前46年にウティカで自殺した。甥のブルートゥスはカエサル暗殺の実行者となった。
ブルートゥス
マルクス・ユニウス・ブルートゥス(前85年〜前42年)。共和政ローマの政治家。ローマ共和政初代執政官の末裔で、小カトーの甥。はじめカエサルを支持していたが、カエサルの独裁が強まると共和政に反するものと考え、前44年3月15日にカッシウスらと共にカエサルを暗殺した。その後ローマを逃れ、前42年フィリッピの戦いでオクタウィアヌス・アントニウス連合軍に敗れて自刃した。
関係性一覧
- カエサル →三頭政治の盟友→対立・内戦 →ポンペイウスカエサル は ポンペイウス に対して「三頭政治の盟友→対立・内戦」の関係です。
- カエサル →三頭政治の盟友 →クラッススカエサル は クラッスス に対して「三頭政治の盟友」の関係です。
- ポンペイウス →三頭政治の盟友・元ライバル →クラッススポンペイウス は クラッスス に対して「三頭政治の盟友・元ライバル」の関係です。
- カエサル →父と娘 →ユリアカエサル は ユリア に対して「父と娘」の関係です。
- ポンペイウス →夫婦(政略結婚) →ユリアポンペイウス は ユリア に対して「夫婦(政略結婚)」の関係です。
- カエサル →大伯父→養子に指名 →オクタウィアヌスカエサル は オクタウィアヌス に対して「大伯父→養子に指名」の関係です。
- カエサル →最も信頼した部将 →アントニウスカエサル は アントニウス に対して「最も信頼した部将」の関係です。
- カエサル →部将 →レピドゥスカエサル は レピドゥス に対して「部将」の関係です。
- カエサル →愛人(息子カエサリオン) →クレオパトラカエサル は クレオパトラ に対して「愛人(息子カエサリオン)」の関係です。
- オクタウィアヌス →三頭政治の盟友→対立・決戦 →アントニウスオクタウィアヌス は アントニウス に対して「三頭政治の盟友→対立・決戦」の関係です。
- オクタウィアヌス →三頭政治の盟友→失脚させる →レピドゥスオクタウィアヌス は レピドゥス に対して「三頭政治の盟友→失脚させる」の関係です。
- アントニウス →三頭政治の盟友 →レピドゥスアントニウス は レピドゥス に対して「三頭政治の盟友」の関係です。
- アントニウス →結婚(前37年〜) →クレオパトラアントニウス は クレオパトラ に対して「結婚(前37年〜)」の関係です。
- オクタウィアヌス →敵対・宣戦布告 →クレオパトラオクタウィアヌス は クレオパトラ に対して「敵対・宣戦布告」の関係です。
- ブルートゥス →暗殺(前44年) →カエサルブルートゥス は カエサル に対して「暗殺(前44年)」の関係です。
- 小カトー →独裁に反対 →カエサル小カトー は カエサル に対して「独裁に反対」の関係です。
- 小カトー →叔父と甥 →ブルートゥス小カトー は ブルートゥス に対して「叔父と甥」の関係です。
- キケロ →共和政の立場から警戒 →カエサルキケロ は カエサル に対して「共和政の立場から警戒」の関係です。
- キケロ →弾劾演説「ピリッピカ」→暗殺される →アントニウスキケロ は アントニウス に対して「弾劾演説「ピリッピカ」→暗殺される」の関係です。
- ポンペイウス →内戦で同陣営(元老院派) →小カトーポンペイウス は 小カトー に対して「内戦で同陣営(元老院派)」の関係です。
- オクタウィアヌス →フィリッピの戦いで撃破 →ブルートゥスオクタウィアヌス は ブルートゥス に対して「フィリッピの戦いで撃破」の関係です。
- キケロ →共和政擁護の同志 →小カトーキケロ は 小カトー に対して「共和政擁護の同志」の関係です。


